約30年ぶりに金星めざすNASA探査機 謎は解明されるか

日経ナショナル ジオグラフィック社

2021/6/28
ナショナルジオグラフィック日本版

探査機が金星の厚い大気を通して覗き込む灼熱(しゃくねつ)地獄のような地表は、どこか地球に似ている(PHOTOGRAPH BY NASA/JPL)

米航空宇宙局(NASA)が惑星科学者たちを驚かせた。競争率の高さで知られるNASAの「ディスカバリー計画」の次の2つのミッションの対象が灼熱地獄のような金星に決まったと、記者会見で発表したのだ。

NASAのビル・ネルソン長官は会見で、「2つのミッションはいずれも金星の表面が鉛も溶けるほどの高温になった理由を解明することを目的にしています。科学界全体のために、私たちが30年以上訪れていない惑星を調べることになります」と語った。

「これらのミッションが、地球の進化過程の理解を深め、太陽系のほかの岩石惑星が、現在、生命がすめない環境であるのに対し、地球はなぜ可能となったのかを理解する助けになることを期待しています」

探査機は2機あり、一つは「ダヴィンチ・プラス(DAVINCI+)」という名で、二酸化炭素(CO2)と硫酸の雲で覆われた金星の有毒な大気を調べる。もう1機は「ベリタス(VERITAS)」といい、金星の表面の詳細な地図を作製し、その地質学的な歴史を再現したいと考えている。

ディスカバリー計画の最終段階には、この2機の金星探査のほかに、火山活動のある木星の衛星イオへの探査と、海王星の衛星トリトンへの探査が候補に残っていた。いずれも、惑星科学分野で何十年も前から重視されてきた天体だ。

今回の決定の背景には、そろそろ金星への米国主導のミッションが必要だとする声の高まりもあったとされる。金星は一部の惑星科学者から「忘れられた惑星」とまで呼ばれているが、その大きさや質量は驚くほど地球に似ている。

また、現在の金星は生命がすめない灼熱地獄のような惑星だが、かつては地球と同じように海に覆われた温暖な惑星だった可能性がある。金星がこれほど過酷な環境になった経緯を理解することは、地球によく似た環境の惑星が宇宙にどの程度存在するかを知る上で非常に重要だ。

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