ペッパーミル5種比較 1位は36段階の挽き方で香る
合羽橋の台所番長が調理道具を徹底比較
東京・合羽橋の老舗料理道具店「飯田屋」の6代目、飯田結太氏がイマドキの調理道具を徹底比較。今回は、世界各国を代表するペッパーミルで、コショウの細かさ、粗さ、挽(ひ)きやすさ、香りを比較する(価格はすべて税込み)。
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こんにちは、飯田結太です。皆さんはコショウを料理によく使いますか。すでに挽いてある顆粒(かりゅう)やパウダー状のものはたくさん売られていますが、ひと手間かけるなら、挽きたてが一番。コショウの新鮮な香りとピリッとする辛さが、料理をひときわおいしくしてくれます。今回は、世界各国の人気のあるペッパーミルを比較検証します。
ペッパーミルを選ぶときに知っておきたいことは、グラインダーや調節機能。グラインダーはセラミック製が一般的です。セラミック製のグラインダーの場合、コショウをすりつぶして細かくしていきます。ほかに、つぶすのではなく、カットするという方法をとっているスチール製などのグラインダーもあります。つぶす方式のものは挽くときに少し重さを感じるかもしれません。一方カットする方式のものは挽き心地が軽いのが特徴です。
粗さの調節は、つまみタイプと、底部分のダイヤル調節タイプがあります。つまみは、ふたをきつく閉めるほど細かく挽ける仕組み。ダイヤルタイプは微調整ができるものも多くあります。
では、今回検証するペッパーミルをご紹介します。
クールなデザインが人気、切るタイプのミル
英国の老舗ミルメーカー、コール&メイソンの中でも最高峰といわれる「グルメプレシジョン」シリーズのひとつが、「ダーウェントペッパーミル」。一番の特徴は、一般的なペッパーミルはすりつぶして挽く仕組みなのに対して、これは、コショウを切る手法。つぶすのではなく切ることで味わいのキレも良いと評判です。実は私が個人的に使っているのもこちら。軽い挽き心地なので、料理中もサクサクと作業が進みます。
こだわり派におすすめ、細かく調節できるダイヤル式
ドイツ、ゾーリンゲンに拠点を構えるザッセンハウスは、1867年創業の老舗ミルメーカーです。日本ではコーヒーミルのメーカーとしてよく知られています。拠点を構えるゾーリンゲンは、日本で例えるなら、金属加工メーカーが数多く集まる新潟県燕三条地域のような場所。ゾーリンゲンにも、ハサミやミルなどを生産する工場や会社が多くあります。
「フランクフルト ペッパーミル WEN」は、握りやすくスリムなフォルムが好評のザッセンハウスを代表する商品です。ミル部分はセラミック製で、大きさの違う2種類の溝で、2段階で粉砕する仕組みになっています。調節ダイヤルは、6段階の挽き目ガイドがついていますが、無段階の調節ができるので、自分の気に入った加減にあわせておくのもいいかもしれません。
36段階もの調節が可能
デンマークのセラミックミルメーカー、クラッシュ・グラインドの「ストックホルム」は、コショウの香りが引き立つことで知られているミルです。香りが強く感じられる秘密は、セラミックグラインダー。挽き心地が重めで、しっかりとつぶすことで、エッセンスオイルがはじけ香りが広がる仕組みになっているのだとか。セラミックグラインダーは岩塩やスパイスにも使えるほど頑丈で、25年保証がついている自信のあるものです。
一番の特徴は、底に付いた調節ダイヤル。1段階ずつカチッと止まるようになっているのですが、なんと36段階にも変えられるのが驚きです。ふたに磁石付きのスパイスマークがあるのもユニーク。裏表でPとSマークがあるので、ペッパーなら「P」、塩なら「S」に変えられます。
プロに愛されている日本製の定番
日本のメーカーでミルといえば、プロの間で長く愛されているIKEDAです。10~15年以上使い続けている人も多く、壊れたという話をあまり聞いたことがないくらい堅牢(けんろう)性が高い商品。「クリスタルウッド6701胡椒挽」は調節を上部のつまみで行います。きつく閉めれば細かく挽けます。また、スチールのグラインダーが2段重ねのらせん形になっているのが特徴。リング側も2段重ねになっているので、合計4段のらせん構造でコショウを挽く仕組みです。細かさではとても定評があります。
東南アジアモデルが日本に上陸
ペッパーミルの代名詞的存在であるフランスのメーカー、プジョーから久しぶりの新作が日本に上陸しました。「メリベル」シリーズは、東南アジア向けに作られた商品。最初は木製でしたが、湿度の高い地域では木製は割れやすいため、樹脂でコーティングしたのだそうです。落ち着いた雰囲気のデザインになりました。
プジョーのペッパーミルは挽き心地が軽いのが持ち味。粗さの調節は、上部のつまみを回して行います。無段階の調節が可能なこともあり、フランス料理のプロに人気が高いのです。ずっしりと重く、プジョーマークが施された高級感のあるペッパーミルです。
以上5種類で検証します。結果は?
粗さ、香りがこんなに違う?
今回は、粗さと香り、挽き心地、ブレの有無を検証しました。調節に数字があるものは、1番目(細かい)と、6番目(粗い)で挽きます。
◆ダーウェントペッパーミル
最初のストロークで軽さが分かりました。ぶれずになめらかにコショウが出てくるのは感動。挽くたびにカットしているからでしょうか、コショウの新鮮な香りがわかります。
◆フランクフルト ペッパーミル WEN
スリムなフォルムなのに、まるでぶれず安定感があることに驚きました。最初からまったくぶれずに最後まで粒の大きさが変わらず挽けたのは感動です。
◆ストックホルム
木製なので、ダントツで手触りが良いのがこちら。挽き心地は重めでしっかりとひねる感触があります。そのぶん、ぶれない。外見のわりに質実剛健タイプですね。
◆クリスタルウッド6701胡椒挽
挽き心地はとてもスムーズで、プロに長く愛されているのも分かります。香りも際立ちます。きっとスチール製のグラインダーで強く挽くからでしょう。ただし、粗さの差はほとんど出ないのが残念。
◆メリベル
プジョーは、プロの間でミルの王様と称されるだけあり、軽くて抜群の挽きやすさでした。1回のストロークで大量に挽けるのはさすがです。ただしシャフトがぶれやすく、挽いているうちに細かさ、粗さが均等でなくなるのが分かりました。
結果は以下のようになりました。
◆総合1位 ストックホルム
ミルの機能の幅が広くまったくぶれないのが素晴らしいです。
◆挽き心地の軽さ1位 ダーウェントペッパーミル
とにかく軽い挽き心地でなめらかでした。
◆挽きの粗さ
1位 ストックホルム
2位 フランクフルト ペッパーミル WEN
3位 ダーウェントペッパーミル
4位 メリベル
5位 クリスタルウッド6701胡椒挽
◆挽きの細かさ
1位 メリベル
2位 ストックホルム/フランクフルト ペッパーミル WEN/ダーウェントペッパーミル/クリスタルウッド6701胡椒挽
◆香りの強さ1位 フランクフルト ペッパーミル WEN/ストックホルム
総合的にみると、デンマークのクラッシュ・グラインド「ストックホルム」に次いで、ドイツのザッセンハウス「フランクフルト ペッパーミル WEN」が優秀でした。挽き心地、香りの強さ、細かめと粗めの差もしっかり出ています。
ペッパーミルを探すとき、細かく繊細なコショウを求めるなら、プジョーの「メリベル」がおすすめです。反対に、ゴツゴツとした粗い粒コショウが好きなら、クラッシュ・グラインド「ストックホルム」がいいでしょう。ペッパーミルを使って家での料理を楽しみましょう。(談)
(文 広瀬敬代、写真 菊池くらげ)
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