経験が成長を邪魔する構造

まず、経験が鈍り役に立たなくなってゆくプロセスがどういうものなのかを考えてみましょう。

たとえば、経験を積んだベテランと会議をしたとき、断定されたことはないでしょうか。

「この問題の解決策は●●に決まっている」

ベテランの経験の中にその解決策で成功したものがある場合、最初は経験則として控えめな提案があったはずです。けれども繰り返し成功することによって、提案は断定に変わります。

あるいはこんな風に否定されたことはないでしょうか。

「その案は以前やってみて失敗した。だから別の案にしよう」

ベテランの方にしても、決して案を否定したいわけではないのでしょう。経験があるからこそ、再度失敗するよりは、別の案を試すべきだ、という前向きな意見として示されることもあります。

しかし、やがて断定も否定も習慣になります。一方でVUCAの時代においては、成功法則も失敗の可能性も変化している場合があります。そしてベテランが断定したこととは別の案で成功したり、否定した方法で成功したりすることで、ベテランの経験は役に立たないものだと判断されるようになるのです。

「質問」と「やってみる」ことは仕事で成長する基本

そうならないようにするためには、経験の見直しが必要です。

自分としては断定したい場面でもあえて相手に対して「質問」してみればよいのです。

「あなたはどう考えるのか」

「なぜそう考えたのか」

「具体的にどうすればよいと思うか」

そうして意見を引き出していくことで、自分が考えていた解決策との違いが見えてきます。その違いについて妥当だと思えるのであれば、相手の意見に賛同すればよいのです。

そうして、新たな意思決定が自分自身の経験に加わります。

否定したくなる場面でも同様です。

過去に失敗したとしても、今は違うかもしれない。その前提としてしっかり質問したうえで、「やってみる」ことが必要です。

その結果、成功すれば経験が研ぎ澄まされるでしょうし、失敗してしまった場合には改めて別の方策を考えればよいのです。

人の成長は、学びの場においてだけ実現するのではありません。

むしろ日々の仕事の場でこそ、大きく成長できるのですから。日々の仕事で成長し続ける習慣を身につけてゆきましょう。

平康慶浩
 セレクションアンドバリエーション代表取締役、人事コンサルタント。グロービス経営大学院准教授。人事コンサルタント協会理事。1969年大阪生まれ。早稲田大学大学院ファイナンス研究科MBA取得。アクセンチュア、日本総合研究所をへて、2012年から現職。大企業から中小企業まで180社以上の人事評価制度改革に携わる。

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