ピン芸人TAIGA 45歳 遅咲き「武器」にブレイク間近!?
特集 沸騰!ポスト第7世代芸人30組(4)
リーゼントヘアに赤いジャケット姿がトレードマークのTAIGA。かつては『爆笑レッドカーペット』や『あらびき団』などで活躍したほか、2014年の『R-1ぐらんぷり』では決勝の舞台も経験しているピン芸人だ。そんな彼が今年1月、『アメトーーク!』(テレビ朝日系)の「40歳過ぎてバイトやめられない芸人」に出演した際、妻と2歳の子どもを前に「貧しい思いをさせてきたからね。なんとか仕事増えたらいいな」と涙を見せると、数多くの応援の声が寄せられた。
最近は40オーバーの"おじさん芸人"をメディアで目にする機会が増えており、TAIGAのブレイクにも期待がかかる。
「この間の『アメトーーク!』は今までとレベルが違うくらいの反響がありました。ツイッターのフォロワーが7000人だったのが倍の1万4000人になりましたし、事務所に手紙だけでなく、『きかんしゃトーマス』のおもちゃやオムツまで届いたんです。ホントにありがたいなって。
ウーバーイーツでバイトしている姿をテレビで見せることには、全く抵抗なかったです。もうちょっと前だったらカッコ悪いと思った時期もあったと思いますけど、40過ぎて売れてないのは事実ですから。そういう芸人を僕は"TAIGA世代"って呼んでるんですけど、運に恵まれなくてまだまだ売れ損なってる面白いヤツがいるよっていうのを、自分が先頭に立って見せていきたいですね」
「お前誰だよ」とツッコミを入れたくなるシチュエーションを、ロックンロール調の歌ネタで展開する「お前誰だよロックンロール」が代表作。同じサンミュージックに所属するぺこぱが「師匠」と慕っていることでも知られ、オードリーやカズレーザーら売れっ子芸人から愛されていることから、その人物像も注目されるように。芸人になった経緯をこう語る。
「高校卒業後、最初は建築資材を製造・販売している会社で働いていたんです。でも、21、22歳の頃、友達の結婚式で司会をやったときに、自分が言ったことで笑いや拍手が起きたことがすごくうれしくて、役者の事務所に応募して活動を始めたのが最初です。すぐ売れると思ったんですけど、そこから長かったですね(笑)。
役者なんだかミュージシャンなんだか、具体的に何になりたいのかもよく分からないまま、とにかくスーパースターになりたくて、モノマネだったらいけるかもしれないと、ショーパブの舞台に立つようになりました。オードリーの春日(俊彰)に出会ったのはその頃です。
最初にやりはじめたモノマネは、河村隆一さんや井上陽水さん。でも、そういう人たちのモノマネは誰でもやってるし、自分にしかできない芸がないとこの世界では無理だと分かって、エルヴィス・プレスリーやロックンロールが好きだったから、そういう格好でステージに上がるようになりました」
ぺこぱら後輩が心の拠り所
これまでに4回のチャンスを逃してきたと語るTAIGA。1回目は07年から08年にかけての『爆笑レッドカーペット』期、2回目は09年から10年の『あらびき団』期、3回目は14年の『R-1ぐらんぷり』決勝進出期、4回目は16年に女性ピン芸人・武家の女とのユニット「ザ・武道」でテレビ出演が重なった時期だという。このたびの『アメトーーク!』出演は5回目の大きいチャンスにあたるそうで、「今度こそ」という思いで準備は整っている状態だ。
「芸人を辞めようかなと思ったこともありました。35歳から40歳が1番迷った時期ですね。就職するならラストチャンス。でも単独ライブで満員のお客さんを笑わせたり、『R-1』の準決勝で、その日イチくらいにウケたりしたことが支えになりました。それに、オードリーやぺこぱ、カズレーザーみたいに僕のことを面白いと言ってくれる、売れている後輩が周りにいたことも心の拠り所でした。
独身の頃は、『もし芸人を辞めるときが来るなら、子どもができたときかな』って思っていたんです。実際にそのタイミングで生活のために辞めた芸人はたくさんいましたし。でも、いざ子どもが生まれてみたら、芸人を辞めるのをこの子のせいにしたくないなって。『お前が生まれたことによって父さんは夢をあきらめたんだ』って言いたくないんですよ。『お前が生まれたら仕事がうまくいった。人生が良くなった』と言ってあげるためにも自分が頑張らないと。
芸人をやっている限り、テレビでもラジオでもレギュラーや冠番組を持ちたいという夢は変わらないです。もちろんネタは作り続けて、単独ライブもやりたいですし、いつかは『TAIGAフェス』みたいなこともやってみたいなって。
過去4回のチャンスで売れなくて良かったって今は思っています。多分、あの時にテレビに呼ばれても何も話せなかったから。この年になってやっと味が出てきて、エピソードトークもいっぱいできるようになったんで、今が1番いい状態です。遅咲きを武器と考えて、面白いものやバカバカしいものを自由に作っていきますよ」
(ライター 遠藤敏文)
[日経エンタテインメント! 2021年4月号の記事を再構成]
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