検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

検索朝刊・夕刊LIVEMyニュース日経会社情報人事ウオッチ
NIKKEI Prime

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

NIKKEI Primeについて

朝夕刊や電子版ではお伝えしきれない情報をお届けします。今後も様々な切り口でサービスを開始予定です。

/

コロナと味覚の新関係 苦みに敏感なら感染しにくい?

詳しくはこちら

NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

人が苦味に対してどう反応するかということと、新型コロナウイルス感染症の重症度には相関関係があるという新たな研究結果が発表された。

これまでの16カ月間で、人が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)に対してどう反応するかは予測できないとわかってきたことを考えると、この知見は注目に値する。基礎疾患や喫煙などいくつかの条件を除けば、ある人が軽症で済みやすいのか、それとも命にかかわる呼吸器疾患を発症しがちなのかを判断することはこれまで不可能だった。もし簡易な味覚検査でその人の重症化リスクを知ることができたなら、と想像してみてほしい。

米ルイジアナ州にあるバトンルージュ総合医療センターの鼻科医ヘンリー・バーラム氏が、医学誌「JAMA Network Open」に2021年5月25日付で発表した論文によると、約2000人の対象者を分析した結果、苦味成分に過敏に反応するいわゆる「スーパーテイスター」の人たちは、新型コロナウイルス検査で陽性になる割合が低かった。もしこの関連性がほんとうに成り立つのであれば、たとえばブロッコリーはさほど苦くないと感じる人たちは、新型コロナの重症化リスクが高いグループに入ることになる。

「この研究は、苦味を感じる舌の受容器が、新型コロナのような呼吸器感染症に対する脆弱性にも関係していることを示唆する非常に興味深いものです」。米テネシー州にあるバンダービルト大学医療センター感染症部門長のデビッド・アロノフ氏はそう語り、味覚受容体が免疫にも関与している可能性があるというのは驚きだと述べている。

スーパーテイスターのスーパーパワー?

心理学者リンダ・バートシャク氏は、1990年代に米エール大学で味覚の遺伝的変異に関する研究を行った同分野の先駆者だ。氏は「スーパーテイスター」という言葉を編み出し、苦味に対して非常に敏感な25%の人たちをこの名称で呼んだ。また別の25%の人たちは、苦味をほとんど感じない「ノンテイスター」、残り50%の人たちは、苦味を感じてもそれを不快に思うほどではない単なる「テイスター」と呼ばれる。

スーパーテイスターが苦味に敏感なのは、彼らの舌には最大4倍の数の味蕾(みらい)があるからだ。特定の食べ物や飲み物に入っている苦味成分は、T2Rと呼ばれる遺伝子群によって作られる苦味受容体によって認識される。

 T2R遺伝子群の中でも特によく研究されているのがT2R38遺伝子だ。この遺伝子がコードするT2R38苦味受容体の多様性は、ブロッコリー、キャベツ、芽キャベツといった多くの野菜に豊富に含まれる苦味成分(フェニルチオカルバミドやプロピルチオウラシルなど)への耐性と相関している。

スーパーテイスターであることと病気との関連が指摘されたのは、実はこれが初めてではない。スーパーテイスターは大腸にポリープができる可能性が高い。大腸ポリープは、そうした苦味のある野菜の摂取量が少ないことと関連し、がんのリスク要因だ。

一方で、スーパーテイスターには生理学的なメリットもある。T2R38苦味受容体は実のところ、舌以外の場所にも存在している。その「口外」エリアの一つが、鼻や上気道を覆っている上皮細胞であり、T2R38受容体はこうした場所に侵入してきた病原体に反応する。

米フィラデルフィアにあるペンシルベニア大学の鼻科医ノーム・コーエン氏が12年に医学誌「Journal of Clinical Investigation」に発表した研究結果では、副鼻腔(ふくびくう)感染症の原因となる細菌が、気道を覆う細胞にあるT2R38受容体を活性化し、一酸化窒素を生成させることがわかった。一酸化窒素は免疫反応の重要な要素であり、侵入してくる病原体に対する最初の防衛ラインだ。この物質は、異物や病原体を体外に排出する、呼吸気道内の繊毛(せんもう)と呼ばれる毛状の構造物を刺激する。その結果、スーパーテイスターは、細菌性の副鼻腔感染症にかかりにくくなる。

気道内の自然免疫とかかわりのあるT2Rを研究しているバーラム氏は、03年にアジアで初めて報告され、22カ国に広がって呼吸器疾患を引き起こしたSARSウイルス(SARS-CoV)に対し、一酸化窒素がその活動を阻害することを知っていた。そこで氏は、新型コロナ感染症とスーパーテイスターの間に関連が存在するかどうかを調べることにした。

ノンテイスターは重症化傾向

バーラム氏のチームが対象としたのは感染歴のない成人1935人で、そのうち266人が調査期間内に新型コロナウイルスの陽性反応を示した。ノンテイスターは、テイスターやスーパーテイスターに比べて、陽性となる割合、感染後に入院する割合、長期間症状を経験する割合が有意に高かった。入院が必要なほど重症だった人の86%はノンテイスターだった。スーパーテイスターのうち、陽性反応が出たのは6%に満たなかった。

バーラム氏はまた、T2Rと新型コロナ感染症との間に関連があるとすれば、それは一般に子どもが感染しにくいことと関係しているのではないかと推測している。

「味覚受容体の数は年齢とともに減少するため、高齢者が若年層よりも症状が悪化するのはそのためではないかとも考えられます」とバーラム氏は言う。これとは逆に、T2Rをより多く持つ大半の子どもたちは、新型コロナに感染してもさほど重症化しない。「ノンテイスターである25%の子どもたちは、T2Rが非常に少ないかまったくなく、その結果、症状がより重くなる可能性があります」

 アロノフ氏は、この研究の限界を指摘する。検査対象となった成人が比較的少なく、年齢の範囲も狭かったため、味覚の傾向と新型コロナの重症度との相関関係が、子どもや高齢者についても言えるのかはわからない。加えて、調査対象となった人々の間に何らかの別の違いがあり、それが結果に影響を与えた可能性もあると、アロノフ氏は言う。

さらなる研究が必要

新型コロナウイルスへの感染リスクが高い人々を特定できれば、社会が隔離策を終了するにあたって貴重なツールとなるだろう。バーラム氏の発見が示しているのは、味覚検査は、新型コロナやその他の感染症のリスクごとに人々を分類するうえで、安全、迅速、安価な方法になり得るということだ。

「現時点では、今回の研究結果は、病院での新型コロナ感染症の管理に役立てるには時期尚早でしょう。一方でこの結果は、何が新型コロナのような感染症に人をかかりやすく、あるいはかかりにくくさせるのかについての理解に影響を与えるかもしれません」。アロノフ氏はそう言いつつ、スーパーテイスターはこうした結論を過大に解釈すべきではないと強調する。「ブロッコリーが大嫌いだという人も、ワクチン接種を避けるようなことはしないでください」

米フィラデルフィアにあるモネル化学感覚センター副所長のダニエル・リード氏もまた、今回の発見を過大に解釈しないよう警告している。味覚と嗅覚の遺伝子の違いを研究しているリード氏は、今回の研究において遺伝子検査を担当したものの、結果に対する解釈がバーラム氏と一致しなかったため、著者として名前を連ねることを辞退した。

リード氏は、バーラム氏の分析においては「新型コロナ感染症における初期の主要な特徴である一般的な味覚の喪失」が考慮されていないと指摘する。その結果、被験者の中には「誤ってノンテイスターに分類された」人がいただろうと、氏は考えている。さらに、20年6月に医学誌「The New England Journal of Medicine」に発表されたゲノム解析研究では、T2R遺伝子がコロナの重症度に関与していると確認されなかった。

リード氏は言う。味覚検査を医療行為の一助とすることは「将来的な目標にはなり得ますが、最初に目指すステップは、味覚や嗅覚のスクリーニング検査を、視覚や聴覚と同じように、日常的な医療の一環として行うことです。味覚や嗅覚のチェックを通常の健康管理に加えることで、そうした感覚がどのように健康や病気を予測するかが判明すれば、有用なツールとなるかもしれません」

バーラム氏も、さらなる研究が必要であることを認めており、研究チームは味覚受容体と新型コロナ感染症との「関係を探る」ために、データの収集を継続しているという。氏はまた、ほかの感染症への応用にも前向きだ。「わたしたちは、この受容体ファミリーが、インフルエンザやその他の上気道感染症に対する自然免疫にどう影響するかについても研究を進めています」

(文 BILL SULLIVAN、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年6月1日付の記事を再構成]

春割ですべての記事が読み放題
有料会員が2カ月無料

有料会員限定
キーワード登録であなたの
重要なニュースを
ハイライト
登録したキーワードに該当する記事が紙面ビューアー上で赤い線に囲まれて表示されている画面例
日経電子版 紙面ビューアー
詳しくはこちら

ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
春割で無料体験するログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
春割で無料体験するログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
春割で無料体験するログイン

権限不足のため、フォローできません

ニュースレターを登録すると続きが読めます(無料)

ご登録いただいたメールアドレス宛てにニュースレターの配信と日経電子版のキャンペーン情報などをお送りします(登録後の配信解除も可能です)。これらメール配信の目的に限りメールアドレスを利用します。日経IDなどその他のサービスに自動で登録されることはありません。

ご登録ありがとうございました。

入力いただいたメールアドレスにメールを送付しました。メールのリンクをクリックすると記事全文をお読みいただけます。

登録できませんでした。

エラーが発生し、登録できませんでした。

登録できませんでした。

ニュースレターの登録に失敗しました。ご覧頂いている記事は、対象外になっています。

登録済みです。

入力いただきましたメールアドレスは既に登録済みとなっております。ニュースレターの配信をお待ち下さい。

_

_

_