「AIチップ設計拠点」責任者の内山邦男氏「日本も波に乗り遅れるな」

有力IT企業などで独自の半導体チップ開発が相次いでいる背景について、国の「AIチップ設計拠点」の責任者である内山邦男氏(産業技術総合研究所)に聞きました。内山氏は「AIなどを高効率で処理する専用チップへの取り組みは日本企業にも大きなチャンスをもたらす」とみています。

――「GAFA」など半導体の大手ユーザー企業が独自に半導体チップを開発する動きが進んでいます。その理由は何でしょう。

「AIチップ設計拠点」責任者の内山邦男氏

「半導体は一般的な計算を行うCPUと、CPUだけではうまく対応できない計算を担当する専用プロセッサーがせめぎ合うような形で発展してきました。専用プロセッサーは『アクセラレーター』とか『専用ハードウエア』とも呼ばれます。半導体ユーザー企業が独自開発しているのは、主にこうした専用プロセッサーです」

「近年の専用プロセッサーの目的はAIのような膨大な規模の計算を効率よくこなすことです。大手IT企業のクラウドによる検索サービスやインターネット通販、翻訳といったサービスにAIが使われており、そのクオリティーを上げるため、目的にあった独自のプロセッサーを開発しようという流れが2010年代半ばくらいから生まれています」

――そうした計算にCPUだけでは対応できないのでしょうか。

「半導体開発では、18カ月程度で集積度が2倍になって性能が向上するという『ムーアの法則』がありますが、このペースが鈍化しています。近年は1つのチップの中に複数のCPUを使うマルチコアという並列処理の方法で性能を上げてきましたが、この方法もおそらくあと10年くらいで限界に達するといわれています」

「過去にも様々な目的の専用プロセッサーが登場しましたが、これまではムーアの法則に沿ってCPUの性能が向上し、特定目的の計算もこなすようになりました。結局は専用プロセッサーがCPUに駆逐されるというパターンが続いてきたわけです。ただ今度はCPUの性能向上が頭打ちになることで、CPUだけではもう対応しきれないというのが業界の共通認識です」

――米エヌビディア社などの画像処理半導体(GPU)はどのような位置づけになりますか。

「グラフィックプロセッサーという画像処理を主な目的とした専用プロセッサーが1990年代に登場しました。エヌビディアはこれをもっと汎用的に使えるチップにしようと考えGPUを開発しました。やがてAIブームが来て、AIアルゴリズムをGPUで動かすと非常に効率がいいことが分かり、GPUがAI計算のために大量に使われるようになりました。ただグーグルとかアマゾンではGPUを使ってもAI処理には物足りなくなったということで、AI専用のプロセッサーを開発しているわけです」

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