2021/6/21

バーストの観測結果は、FRB 20200120Eがかなり近くにあることを示していたため、科学者たちは、欧州超長基線電波干渉法(VLBI)ネットワークという電波望遠鏡のネットワークを利用して、高速電波バースト源の正確な位置を特定した。

著者らは論文で、「われわれはFRB 20200120Eが、M81銀河の球状星団と関連していることを最終的に証明し、地球からの距離は、これまでに知られている最も近い銀河系外高速電波バースト源の40分の1であることを確認した」としている。

「非常に興味深い結果です」とチャタジー氏は言う。「既存のモデルに当てはめるのは非常に困難です」

先に述べたように、科学者の間では、高速電波バーストの発生源は「マグネター」だとする説が有力だった。マグネターは極端に強い磁場をもつコンパクトな天体で、大質量星が超新星爆発を起こしたあとにできる中性子星の一種だと考えられている。マグネターの強力な磁場は誕生から数万年後には失われ、やがてふつうの中性子星になる。

しかし、天文学者が知るかぎり、球状星団にはマグネターになるような恒星は存在しない。球状星団は、観測可能な宇宙の中で最も古い天体の1つだ。銀河の周りを軌道運動していることが多く、その年齢は数十億歳とされ、少なくともその銀河と同じくらい、もしくはそれよりはるかに古い可能性もある。

「マグネターは宇宙のいたるところで生まれていて、銀河系にもたくさんありますが、球状星団にはありません」と、 球状星団を研究している米ノースウェスタン大学のクレア・イエ氏は言う。「いったい何が起きているのかという感じです」

発生源は? 深まる謎

高速電波バーストが初めて発見されたのは07年。その謎解きが前進しはじめるまでには、約15年の歳月を要した。当初は、蒸発するブラックホール、死んだ星のフレア、高密度の天体どうしの衝突、はたまた宇宙人のしわざなどの仮説が提案されていた。電波バーストの詳しい構造や、ミリ秒単位の持続時間や強度などの手がかりから、電波は非常に高密度でコンパクトな天体から発生しているのではないか、と考えられるようになった。

そこで科学者たちは、ブラックホールや中性子星といった、大質量星が超新星爆発を起こしたあとに残る天体に目を向けるようになった。その後の観測で、一部の高速電波バーストが極端に磁場が強い領域で発生していることが明らかになり、発生源はマグネターではないかと考えられるようになった。

次のページ
より多くの情報を
ナショジオメルマガ