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謎の高速電波バースト 「あるはずがない場所」で発生

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

地球からそう遠くないところで発生した「高速電波バースト」が、天文学者たちを困惑させている。

高速電波バーストは、数ミリ秒以内に発生する激しい電波フラッシュだ。謎の多い現象ではあるものの、科学者たちは、発生源は「マグネター」と呼ばれる若くて寿命の短い天体ではないかと推測していた。しかし、査読前の論文を投稿するサーバー「arXiv(アーカイブ)」に2021年5月24日付で発表された論文によると、この高速電波バーストは、渦巻き銀河M81の球状星団と呼ばれる古い星々の集まりから繰り返し発生していたという。

「ここは高速電波バーストがあるはずがない場所だ」と、論文の共著者であるカナダ、トロント大学の天文学者ブライアン・ゲンズラー氏はツイートしている。「どうなっているんだ?」

科学者たちは、この矛盾を説明するのに苦労していて、ほかの多くの天文現象と同様、高速電波バーストを発生させるしくみは一つではないのではないか、という結論に向かっている。

「もしかすると、高速電波バーストはあらゆる種類の電波源と関連した、ごく一般的な現象なのかもしれません」と言うのは、米コーネル大学の天文学者で、高速電波バーストを研究しているシャミ・チャタジー氏だ。なお、チャタジー氏は今回の発見には関与していない。

いったい何が起きているのか?

このバーストは、20年1月にカナダのドミニオン電波天文台にある「カナダ水素強度マッピング実験(CHIME、チャイム)」電波望遠鏡で最初に発見され、「FRB 20200120E」と名付けられた。17年に稼働をはじめたCHIMEは、これまでにも数多くの高速電波バーストを発見していて、当時30未満しか知られていなかった高速電波バーストは、今では1000以上確認されている。

多くの高速電波バーストは一度しかバーストを起こさないが、FRB 20200120Eは繰り返しバーストを起こしており、このような反復型高速電波バーストはこれまでに20あまり知られている。FRB 20200120Eのバーストは、何十億光年も離れたところからやってくる多くのバーストほど明るくないが、昨年の観測で、空のどの領域から来ているかを特定することができた。

バーストの観測結果は、FRB 20200120Eがかなり近くにあることを示していたため、科学者たちは、欧州超長基線電波干渉法(VLBI)ネットワークという電波望遠鏡のネットワークを利用して、高速電波バースト源の正確な位置を特定した。

著者らは論文で、「われわれはFRB 20200120Eが、M81銀河の球状星団と関連していることを最終的に証明し、地球からの距離は、これまでに知られている最も近い銀河系外高速電波バースト源の40分の1であることを確認した」としている。

「非常に興味深い結果です」とチャタジー氏は言う。「既存のモデルに当てはめるのは非常に困難です」

先に述べたように、科学者の間では、高速電波バーストの発生源は「マグネター」だとする説が有力だった。マグネターは極端に強い磁場をもつコンパクトな天体で、大質量星が超新星爆発を起こしたあとにできる中性子星の一種だと考えられている。マグネターの強力な磁場は誕生から数万年後には失われ、やがてふつうの中性子星になる。

しかし、天文学者が知るかぎり、球状星団にはマグネターになるような恒星は存在しない。球状星団は、観測可能な宇宙の中で最も古い天体の1つだ。銀河の周りを軌道運動していることが多く、その年齢は数十億歳とされ、少なくともその銀河と同じくらい、もしくはそれよりはるかに古い可能性もある。

「マグネターは宇宙のいたるところで生まれていて、銀河系にもたくさんありますが、球状星団にはありません」と、 球状星団を研究している米ノースウェスタン大学のクレア・イエ氏は言う。「いったい何が起きているのかという感じです」

発生源は? 深まる謎

高速電波バーストが初めて発見されたのは07年。その謎解きが前進しはじめるまでには、約15年の歳月を要した。当初は、蒸発するブラックホール、死んだ星のフレア、高密度の天体どうしの衝突、はたまた宇宙人のしわざなどの仮説が提案されていた。電波バーストの詳しい構造や、ミリ秒単位の持続時間や強度などの手がかりから、電波は非常に高密度でコンパクトな天体から発生しているのではないか、と考えられるようになった。

そこで科学者たちは、ブラックホールや中性子星といった、大質量星が超新星爆発を起こしたあとに残る天体に目を向けるようになった。その後の観測で、一部の高速電波バーストが極端に磁場が強い領域で発生していることが明らかになり、発生源はマグネターではないかと考えられるようになった。

そして昨年、銀河系内のマグネターが、高速電波バーストに似た電波バーストを発生させた。この電波バーストは、宇宙のはるかかなたからくる非常に強力な電波バーストに比べると少々弱かったが、科学者たちは高速電波バーストの発生源はマグネターであると確信した。

米コロンビア大学とフラットアイアン研究所に所属するブライアン・メツガー氏は、当時の状況を「理論家も観測者もマグネターという答えに満足していました」と振り返る。

しかし、その状況は長くは続かなかった。FRB 20200120Eの発見により、球状星団の中でマグネターが誕生して生き残るか、非常に古くて不活発な星々の集団が強力な電波バーストを起こすしくみのいずれかを示す必要に迫られたからだ。どちらも簡単な問題ではない。

より多くの情報を

天文学者たちは、球状星団にマグネターがあるはずはないが、ほかの種類の星の死骸はたくさんあるはずだと考えている。太陽のような星が膨張して赤色矮星(わいせい)となって死んだあとにできる白色矮星や、より大きな超新星爆発によって形成される中性子星は、古い球状星団の初期に作られている可能性がある。

もしかすると、中性子星どうしや白色矮星どうしが衝突して合体したり、白色矮星が伴星から大きな質量を奪って崩壊し、新たな中性子星になったりしたときに、マグネターが誕生するのかもしれない。しかし、現時点では、こうしたしくみでできたマグネターが観測されたことはない。

ノースウェスタン大学のイエ氏は、球状星団の中でマグネターが形成される道筋や、ほかの恒星が高速電波バーストの発生源となる可能性を検討する必要があると考えている。また、高速電波バーストのほかの発生源について考えるためには、今回の球状星団の情報をもっと集めることが重要だという。

「一口に球状星団と言ってもさまざまです」とイエ氏は言う。「密度の高いものもあれば低いものもあり、球状星団が異なれば結果も異なるものになるでしょう」

メツガー氏は、マグネターがなくても高速電波バーストのようなものを発生させることはできるはずだと指摘する。2つの中性子星がお互いのまわりを回っていれば、高速電波バーストに似た爆発を起こす可能性がある。ブラックホールのまわりでときどきジェット(噴出)やフレア(爆発)を生じる円盤状の物質が電波バーストの発生源になる可能性もある。「私は、ここにある天体はマグネターではないのではないかと考えています」

チャタジー氏も同意見で、「一部の高速電波バーストはマグネターとは無関係で、ブラックホールのジェット現象のようなものと関係しているのかもしれません」と言う。

もしかすると高速電波バーストには、いくつかの異なる発生源があるのかもしれない。短時間に膨大なエネルギーが放射されるガンマ線バーストという現象は、1960年代に軍事衛星によって発見されて以来、数十年にわたって天文学者を悩ませてきた。だが今では、強力な超新星爆発でも、中性子星どうしの衝突でも、発生することがわかっている。

「自然界はガンマ線バーストを発生させる方法を2つ、編み出しました」とメツガー氏は言う。「高速電波バーストについても、似たようなことが起こっているのではないでしょうか」

(文 NADIA DRAKE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月31日付]

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