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17年周期ゼミ大発生 食べる、遊ぶ、動物の意外な反応

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

米ワシントン特別区で、周期ゼミの大発生が始まった。「ブルードX(テン)」と呼ばれる17年ゼミの大集団だ。

セミの大量発生に動物たちがどんな反応を見せるのか、動物園のスタッフは注目している。ワシントン特別区にあるスミソニアン国立動物園では、390種以上、2700頭の動物が飼育されている。チーターなどの大型ネコ科動物がセミをおやつにすることはないだろう。草食動物もセミを食べないはずだ。

「セミを食べそうなのはタテガミオオカミです」。同動物園の栄養士長であるマイク・マスランカ氏は、電話での取材にそう答えた。タテガミオオカミは「日和見的な雑食動物」で、植物、昆虫、小型の哺乳類や爬虫(はちゅう)類など、1年を通して食事の内容を変えていくという。

電話の途中、マスランカ氏のもとに同僚からメールが届いた。「速報が入りました!」と彼は言った。「タテガミオオカミのふんの写真が届きました。砕けたセミの死骸が入っています。タテガミオオカミがセミを見つけました」

17年に1度だけ

ワシントン特別区をはじめ米国東部では、ブルードXの周期ゼミが17年ごとにはい出してくる。その数は数兆匹と言われる。地中から出てきた幼虫は、茶色い殻を脱ぎ捨てて成虫になる。羽化したばかりの成虫は白くて柔らかい体をしているが、数時間後には翅(はね)が伸び、黒っぽい色の体に赤い目をした姿になる。

セミたちは木にしがみついて樹液を吸い、オスはメスを引き寄せるために一斉に鳴く。彼らは交尾をし、メスは木の枝に卵を産みつける。やがてふ化した幼虫は地面に落ち、地中に潜って17年間の休眠に入る。ここまでが約6週間だ。

マスランカ氏がこの動物園で働き始めたのは15年前で、前回ブルードXが出現した2004年の2年後だったが、「当時のスタッフから、園内の通路がセミだらけになってしまったのでシャベルで『セミかき』をしたと聞いています」という。

 もちろん街の中でもセミをバリバリと踏み潰さずに歩くことはできなかった。ワシントン特別区エネルギー環境局の野生生物学者、ダン・ラウチ氏は、「聞こえるのはセミとズグロアメリカムシクイの鳴き声だけでした」と回想する。ズグロアメリカムシクイは、南米から夏の繁殖地であるカナダに向かう春の渡りの途中でワシントン特別区を通過していたのだ。

ラウチ氏は今回、野生の動物たちがどのように反応するかを見てみたいと言う。「なにしろ17年に1度のことなのでデータはなかなか集まらないのですが、どの種がセミを利用するのか知りたいのです。これは大きな科学実験です」。17年ゼミの出現により、アオカケス、コマツグミ、アライグマ、オポッサムなどの在来種の餌が豊富になり、個体数が大幅に増える可能性があるという。

動物園の動物については、餌のほかにどの程度の量のセミを食べてしまうかが気になるところだ。「数十匹なら食べても心配ありませんが、何百匹も食べるのは問題です」とマスランカ氏は言う。

セミはタンパク質と脂質を豊富に含んでいるが、外皮や羽などの外骨格は硬いキチン質でできているため、大量に摂取すると消化が悪くなるのだ。

飼育員は動物の体重や行動をモニターし、セミを大量に食べているようなら食事を調整する。マスランカ氏のチームは、セミの幼虫の栄養価を調べることにしている。

「コロナ禍がなければ、各展示場の動物たちがどのくらいセミを食べているか、ボランティアの方たちに観察してもらうことができたのですが」とマスランカ氏は言う。パンデミック(世界的大流行)の影響で、動物園は20年11月から来園者やボランティアの立ち入りを禁止していて、21年5月21日に通常営業を再開したばかりなのだ。

園内の動物たちの様子

再開初日の朝、私(著者のNATASHA DALY)は動物園を訪れた。タテガミオオカミのにおいがした。タテガミオオカミは縄張りを示すためにスカンクのおならのような強烈なにおいの尿をするので、見る前からその存在がわかる。近づいてみると、タテガミオオカミが草むらを夢中で掘っていて、おそらくセミを食べていた。

園内の道をさらに進むと、セミを食べすぎておなかがいっぱいになったのか、アカカワイノシシがぐっすりと眠っていた。

その先で飼育員のダイアナ・ボーゲル氏に会った。彼女はバケツを下げていて、中にはビーバーの生息地で集めてきたというセミがいっぱいに入っていた(草食のビーバーはセミに興味がない)。

私たちは一緒に歩いていった。彼女が途中でアカオタテガモの池にセミを数匹投げ入れると、カモたちはあっという間に食べてしまった。ワタリガラス舎を通り過ぎるとき、ボーゲル氏は、ワタリガラスたちがいつもよりさかんに穴を掘っていると言った。「セミの幼虫を見つけたのでしょう」

カワウソ親子のところに行くと、2匹は池の中でくるくると宙返りをしていた。ボーゲル氏は、カワウソ用のおもちゃと一緒にセミを置いた。カワウソたちはセミに駆け寄り、早速、なぶり始めた。

セミの一生

17年間も地中で木の根の樹液を吸って平和に過ごしてきたセミにとって、地上での生活は過酷である。翅が破れ、脚が折れ、胴体の一部が欠けた状態でよろよろと歩いているものもいる。あるものは鳥の餌となり、あるものはカワウソの遊び道具となる。その死骸は落ち葉のように道に散らばる。

羽化したときと同様、彼らは一斉に死んでゆく。周期ゼミの強みは個体ではなく集団にある。アカカワイノシシにどれだけ食べられようと、車のタイヤにどれだけ踏み潰されようと、ブルードXのセミたちは十分な数だけ生き残って交尾をし、卵を産み、次の世代が生まれてくる。ワシントン特別区の生態系が彼らにとって好ましいものであり続けるなら、私たちは38年に再び彼らに会うことになるだろう。

科学者であるラウチ氏とマスランカ氏にとって、17年に1度のセミの出現は刺激的な出来事だ。「最高にクールな現象です。園内の動物たちが行儀よくしてくれている限りはね」とマスランカ氏は言う。

少なくともチーターたちは冷静だった。草の生えた斜面で寝そべっている彼らは周囲の様子に無頓着で、セミの侵入にも気づいていないように見えた。展示場の前では2人の幼児がチーターに背を向け、道に落ちている1匹のセミに目を奪われていた。

しゃがみ込む子どもたちを母親が説得していた。「セミはおうちの庭にもいるでしょう? ほら、チーターを見なさい!」

(文 NATASHA DALY、写真 REBECCA HALE、訳 三枝小夜子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月30日付]

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