金融・保険業のボリュームゾーンは年収600~700万円と高く

国税庁の民間給与実態統計調査による1年未満勤続者(新卒入社者も含まれ得るが、年収水準が上がるほど転職者を指すものと想定される)の年収分布を見ると、年収が比較的低い層では全業界平均が500万~600万円がボリュームゾーンであるのに対し、金融・保険業は600万~700万円がボリュームゾーンになっています。年収の高い層では1000万~1500万円、さらに2500万円超の出現率が高くなっています。若手層だけでなく、高い年収を得る中高年層の転職も活発に行われているように見られます。

図3 一般労働者(25~64歳)の業界別年収 出所: 厚生労働省 賃金構造基本統計調査より、KEARNEY作成

一方、年収上位5業種の中でも対照的なのが電気・ガスなどです。年収水準は最も高い水準ですが、転職者の高年収の出現率が低く、若手層を除いて中途入社が少ないことが見て取れます。恐らく転職者は低年齢層が中心で、専門性を生かした採用というより一般的なポテンシャルを評価して採用した結果、年収水準は現状維持程度となり、転職による年収増の比率は平均よりも低く出ているという解釈ができそうです。

図4 1年未満勤続者の年収分布 出所: 国税庁 民間給与実態統計調査より、KEARNEY作成 注: 年収500万円未満は新卒労働者の含有率が高いと想定し、年収500万円以上のみで集計

では、こうした転職者はどのようなバックグラウンドを持っているのでしょうか。転職者に占める同業からの転職率を見てみると、金融・保険業は他業界とは異なる特徴がありました(図5参照)。全業種平均で見てみると、同業からの転職率は年齢層によらず13~15%とほぼ同水準で推移します。6~7人に1人くらいが同業からで、後は他業種からの転職ということになります。

これを業界別に見てみると、金融・保険業は若手層では同業からの転職率が低いものの、年齢層が上がるにつれて同業からの転職率が上昇していき、最終的には全業種の中でも同業からの転職率が最も高くなります。これは他業界には見られない特徴です。若手層には金融・保険の知見を求めず、ポテンシャル(場合によってはネットワーク)を期待し、門戸が広く開かれているものの、年齢層が上がるにつれて金融・保険の専門性を問われるのではないかと考えられます。

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