――コロナ禍で日常は一変しました。

「コンビニは街を支える存在なんだという自負があります。全国に物流網があり、スタッフが3人いれば店の営業は継続できる。新型コロナの感染拡大で20年4月に緊急事態宣言が出た時にも、何としても営業を継続できる体制をつくろうと呼びかけました。ただ、在宅勤務など人の動きが減ったことで、都市部では売り上げが激減した店もあります。当然、オーナーからは不安の声も届きました。毎週出し続けたメッセージで強調したのは、最後は本部が加盟店を守るということです。『よくぞ言ってくれた』という反応と、『言葉の重みを理解しているのか』『本当に責任を取れるのか』という反応と両方がありました」

責任を取る覚悟、物事を動かす

「リーダーが責任を取ると表明することで、物事が動き始める瞬間があると思っています。実際、店舗から届く意見も徐々に変わっていきました。先行きの見えない不安から、店づくりや商品の提案が目立つようになっていきました。現場がお客さんと接してつかんだ手応えを施策として落とし込んでいきました。ローソンをやっていて良かったという意見が届いた時はうれしかったですね」

――どんな出来事が印象に残っていますか。

「全国の小中高校が休校になり、オーナーや社員から何か支援できないかという声が上がっていました。学童保育施設は運営を継続していたので、子どもたちの滞在時間が長くなり、食事が課題になるだろうと考えました。当初、おにぎり3万個を先着順で無償提供することを決めたのですが、各地で応募が殺到しました。工場で増産体制を敷くことで、最終的には58万個を届けることができました」

三菱商事の社長秘書時代

「ただ、問題もありました。各地でおにぎりを学童施設に届ける人が必要になります。それをオーナーやスタッフにお願いしてもいいのか迷っていました。ここ数年はコンビニの24時間営業の見直しが社会的に議論され、人手不足や労働環境に注目が集まっていました。経済産業相の主導で有識者会議が立ち上がっていたほどです。現場にこれ以上負担をかけてはいけないという思いが拭えず、本部でやるべきことだと思いを巡らせていました。そんな時、あるオーナーから『水臭いじゃないか』と声をかけられ、ハッとしたんです。『何で言ってくれないの』と。やっぱり仲間なんだなと再認識しました。仲間だからこそ意見は躊躇(ちゅうちょ)せず、ストレートに伝えなければならない。そう痛感した出来事でした」

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「下っ腹に力を入れて頑張れ」
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