Men's Fashion

デニム代表・リーバイス501 ヴィンテージの見方とは

How to

大人のヴィンテージ入門(1)

2021.6.10

MEN'S EX

選びや着こなしに様々なノウハウが要求されるヴィンテージの世界。いったいどこから手をつけていいやらとお悩みの方に、現在のクラシックと古き良きヴィンテージの双方に精通するメンズファッションディレクターの西口修平さんが“大人のヴィンテージ入門”を手ほどきする。




Profile Shuhei Nishiguchi

1977年生まれ。本誌をはじめ、各ファッションメディアから取材依頼が毎月殺到するメンズウェアディレクター。アップデートされたクラシックを提案するスペシャリストでありながら年季の入ったヴィンテージ好きでもあり、かつては古着店に勤務していた経歴も。「新しいものと古いものをフラットに見ている」と本人が語るとおり、両者を自在にミックスしたスタイリングが世界的な評判を呼んでいる。今年3月には2冊めとなる著書「Nishiguchi Essentials 100」(ワン・パブリッシング刊)を上梓(じょうし)。

Profile Shuhei Nishiguchi

1977年生まれ。本誌をはじめ、各ファッションメディアから取材依頼が毎月殺到するメンズウェアディレクター。アップデートされたクラシックを提案するスペシャリストでありながら年季の入ったヴィンテージ好きでもあり、かつては古着店に勤務していた経歴も。「新しいものと古いものをフラットに見ている」と本人が語るとおり、両者を自在にミックスしたスタイリングが世界的な評判を呼んでいる。今年3月には2冊めとなる著書「Nishiguchi Essentials 100」(ワン・パブリッシング刊)を上梓(じょうし)。

西口さん的・名作ヴィンテージ#001 リーバイスの501“66前期モデル”

リーバイスの代名詞である「501」。そのヴィンテージは製造時期ごとの特徴によって区別され、「XX」「ビッグE」「赤耳」などといった通称がつけられている。1973~80年ごろの501は「66」と呼ばれ(ちなみにこの名前は製造年と関係なし)、さらに「66前期」(1973~78年ごろ)、「66後期」(1978年~80年ごろ)の2種類に分けられる。ただし、その移行は漸次的で、各モデルの製造時期については曖昧な部分があったり、仕様に例外があったりすることにも注意。こちらの66前期モデルはヴィンテージ・リーバイスの入門作として有名だ。色残りでかなり大きく変動するが、価格相場は3~5万円台。

入門に最適な“最後のヴィンテージ・リーバイス“

M.E. 1990年代以来のヴィンテージブームといわれる今、大人の間でも古着熱が高まっています。そこで、今の装いと古着の双方に精通した西口さんに、「大人のヴィンテージ」の基本をご教授いただきたく思います。第1回のテーマは、大基本のリーバイス。年代によってシルエットもディテールも様々で、初心者はどれを選んでいいものか悩みがちですが、まず手に入れるならどういったものがよいのでしょうか?

西口 最初の1本としてなら、501の「66」モデルがいいのでは。’70 年代をピークに製造されていたもので、”ヴィンテージ・リーバイス“といわれるジーンズのなかでは最も新しいモデルになります。ちなみに66より後になると ”ヴィンテージ“ではなく”オールド・リーバイス“と呼ぶのが一般的です。

M.E. 66モデルの特徴はどういったところですか?

西口 ディテールを挙げると様々な部分がありますが(下コラム参照)、最も大きな特徴はシルエットですね。年代とともにワタリや裾幅、股上の深さなどが多様に変化してきた501ですが、66モデルは細身のテーパードシルエットで、テーラードジャケットをはじめとする大人の洋服に合わせやすいのが魅力です。

M.E. それが初心者におすすめな理由のひとつというわけですね。

西口 そうですね。さらに、66モデルの中でも「66前期」と呼ばれるものがヴィンテージ入門としておすすめです。その理由は、色落ちの表情。前期ものは”縦落ち“といわれる、縦方向に白い筋が入るような色落ちを見せるのに対し、後期ものは全体が満遍なく色落ちしていきます。前期と後期でデニムの染料が変わったという説が有力ですね。縦落ちはヴィンテージ・ジーンズにおける醍醐味のひとつですから、それを味わえる66前期がおすすめというわけです。ちなみに価格的にも、66より前の「XX」や「ビッグE」といったモデルより手ごろ。そういったところも入門向きな理由ですね。そしてもちろん、この時代の501はセルビッジ(耳付き)デニムを使用しています。

M.E. なるほど。ところでセルビッジデニムがよしとされるのはなぜですか? 裾を折り返さなければわからないディテールですが……。

西口 セルビッジデニムは、はき込むとアウトシーム部分に美しいアタリが出てきます。なので、耳付きデニムを使用したものとそうでないものとでは、エイジングの表情に違いがあるということですね。ちなみに501の場合、’80 年代を中心とする”赤耳(レッドライン)“時代を過ぎると、しばらくセルビッジデニムが使用されなくなります。

西口さんが解説! 「66前期」の目利きポイント

Point 1 スモールe

「66モデルより前に製造されていた501では、バックポケット脇に付いた赤タブのブランド表記に大文字のEが用いられていました。これに対し、66では小文字のeが用いられています。これは“スモールe”と呼ばれ、製造時期を識別する指標のひとつとなっています」

Point 2 ポケット裏のステッチ

「前期と後期に分けられる66モデルですが(詳細は上の本文参照)、それを判別する際にはヒップポケット内側に注目。ここが裾と同様のチェーンステッチになっているものは66後期、写真のようにシングルステッチになっているものは66前期と分類されます」

Point 3 ボタン裏の刻印

「わかりにくいディテールですが、目を凝らすとフロントボタンの裏側に“6”と刻印されているのが見えます。これも66前期モデルであることを表す特徴。目立たないディテールですが、ヴィンテージ好きの間では年代を判別する重要な材料として知られています」