2021/6/9

蒼太 不安もなにも、良い学生と出会えてよかったと思うのでは?

安藤先生 企業側は、「こんなに優秀な学生なら、他の企業からも当然に内定が出るだろうな」と考えるのではないでしょうか。

蒼太 確かに。僕は優秀なんですもんね!

安藤先生 そうですよね(笑)

しかし他の会社からも高く評価される学生であれば、「うちが内定を出したとして、本当に来てくれるのかな」「後になって内定辞退ということにならないかな」という不安を持つことになりませんか?

蒼太 そっか。学生側も企業を選んでいるわけですもんね。「能力が高い学生を採用できるか」だけでなく、「その学生が本当に入社してくれるか」も心配しているわけですね。

安藤先生 採用してから、すぐに辞めてしまわないかというのも懸念事項です。

厚生労働省の調査によると、大卒で就職した後に3年以内に退職してしまう割合は2017年3月に卒業した学生で32.8%となっています。つまり3年以内に、およそ3分の1が辞めてしまうわけです。

そして新卒で採用した後には、当分の間は研修もありますし、利益にはほとんど貢献しない社員に給料を支払っている状態です。一通りの研修を終えて、これから活躍してもらおうという段階で辞められてしまっては、会社としてはたまりません。

蒼太 3割が辞めちゃうのかぁ……、それは確かに企業側も不安だよな。

今の話で、能力が高く、本当に来てくれて、そして辞めない人であることを会社は求めているというのは分かりました。

企業の不安とエントリーシートの関係

安藤先生 もちろんそれだけではないのですが、就職活動について考え始めたばかりの南さんは、まずはその点に注目していれば十分です。

そして就職活動をしていく上で必ず登場するESでの記載内容や面接での質問事項というのも、基本的には、これらの不安を解消するためのものです。

ESに書く内容とはどのようなものか知っていますか?

蒼太 えーと、氏名と住所などの連絡先、あと学歴と所属ゼミなんかを書きます。あと自己PRや志望動機などでしょうか。

安藤先生 そうですね。やはり注目ポイントは、自己PRと志望動機です。

これらは直接的に「自己PRを書いてください」などと記載されているとは限りません。例えば、「学生時代に力を入れたことは」という、いわゆるガクチカなども、自己PRと同じような機能を持っています。また場合によっては、志望動機を伝える欄として利用することもできます。

南さんは「学生のときに力を入れたこと」を教えてほしいと言われたら、どのように答えますか?

蒼太 そうですねえ。力を入れたことは、アルバイトでしょうか。地元から離れて一人暮らしをしているので、親にあまり負担をかけたくないと思ってアルバイトは結構やっています。でも単位は落とさないように頑張ってます!

安藤先生 なるほど、それは大変ですね。頑張ってください。

それでは言い方を変えますね。会社側は、何を知りたくて、この「学生のときに力を入れたこと」という質問をしているのだと思いますか?

蒼太 それは……、その学生がどんな人かを知りたいんですよね?

安藤先生 その通りです。しかし「趣味は何ですか」などではなく「力を入れたこと」を聞いているわけです。それはなぜでしょうか?

ここで重要なのは、相手の質問の意図を理解することです。先ほどの会社側の不安を思い出してください。それは、

この学生は、
(1)会社に入って活躍してくれるだろうか?
(2)内定を辞退しないだろうか?(入社してもすぐに辞めてしまわないか?)

という2点でした。実は、この二つの不安を解消したくて、企業は自己PRと志望動機を書かせているのです。

蒼太 もしかして!

(1)会社に入って活躍してくれるだろうか?=自己PR
(2)内定を辞退しないだろうか?(入社してもすぐに辞めてしまわないか?)=志望動機

とつながっているのでしょうか?

安藤先生 その通りです!

南さん、だいぶ理解が進んできましたね。それでは一度、試しにESを書いてみましょうか。

蒼太 えっ、いま書くんですか?!

(次へ続く)

安藤至大
日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。
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