N大学経済学部3年生の南蒼太(みなみ・そうた)は労働経済論の授業を担当している安藤先生のところへ就活の相談に来ています。前回は、「インターンシップに行くべきか?」という疑問から、インターンのメリットと注意点について聞きました。そして安藤先生は、「相手(企業)の不安要素を解消することが、就活というゲームを攻略するポイント」だと言います。しかし蒼太は「ゲーム」という言葉がピンときていない様子です。
就活という「ゲーム」のルールを知る
安藤先生 真面目に取り組んでいる学生の立場からは、「就活はゲームじゃなくて一生が掛かっているんだ」と感じるかもしれません。
しかし、ここで言うゲームとは遊びという意味ではありません。決められたルールのもとで戦略的に行動を選択する状況のことです。このような言葉の使い方は、経済学部で学ぶ「ゲーム理論」の名称にも登場します。
多くの学生は就活というゲームのルールを明確に意識はせずに手探りで活動を進めてしまいます。その際に、うまくいった先輩の体験談や就活本などを参考にしますが、表面的にまねをして逆効果になったりもするわけです。
蒼太 有名企業から内定を得た先輩の話を聞いても、実際に自分がどうすればいいのかはなかなかわからないですしね。
安藤先生 ルールがわかっていないと、うまくいかなかったときになぜ失敗したのかが分からず不安なままです。例えばサッカーなども、仮にハンドやオフサイドなどの反則を知らないで試合に参加したとすると、審判に笛を吹かれてばかりで、楽しくありませんよね。同様に、就活にも様々なルールがあります。そしてルールは、明示されているものだけでなく、暗黙のものも存在します。
蒼太 うーん、ルールですか。考えたこともありませんでした。なんでちゃんと教えてくれないんですかね……。
安藤先生 そのルールを認識して理解するところも含めて就活というゲームなのかもしれませんね。
ただし大学によって差がありますし、所属しているゼミやサークルによっても違いますが、上級生から様々な情報が伝えられています。「就活に強い」と言われているゼミもありますよね。つまり良い環境にいれば自分で考えなくても自然と必要な情報を得ることができるのです。ここに情報面の格差があります。
蒼太 なんだかズルいようにも感じますが……。
安藤先生 しかし自然と情報が伝わるのを止めることはできません。どんな先輩がどの会社に就職したのか、その際にどのような活動が評価されたのか、いつ頃から取り組みを行っていたのかなどの情報が自然と共有されているわけですから。本人たちはそれが当たり前であり意識していないかもしれませんが、大きなアドバンテージになります。
これに対して、情報を得られない場合には、人柄も良く企業で活躍できそうな学生でも就活のルールを理解するのに手間取ってしまうかもしれません。何しろ自分で発見しなければならないわけですし。
蒼太 サークルには入っていますが、あまり真面目に活動していないので、先輩の就活状況なんて知らないです。
安藤先生 現在は新型コロナウイルス感染症により、大学の講義やサークル活動が制限されていますね。そのため就活について先輩から学ぶといった経路が機能不全になっています。
そこで私としては、大学生の皆さんにはルールをきちんと理解した上で就活に臨んでほしいと考えて、様々な形で情報提供をしていきたいと考えています。