
細かいところで、意外と面白いのが、ナムルが充実していること。「焼肉きんぐ」にしても、ナムルは定番のゼンマイ、豆モヤシ、青菜などを盛り合わせたものが一品あるだけだが、「プレミアムカルビ」は、様々な小鉢を盛り合わせた「ナムル10種盛合せ」(1078円)がある。お通しで出すような白い小ぶりの容器に盛り合わせたものを白い大きな平皿に並べてあり、見た目も楽しめる。
小鉢に入ったものもタマネギの酢漬けや、オクラ、豆を煮たものなど普通の焼肉店にはない料理があって、一つ注文すれば、大人数で楽しめる。こうした細かいところの作り込みに本気度を感じてしまう。
「プレミアムカルビ」の1号店が登場したのは2018年。ホームページの採用情報によると、今年6月に埼玉・川口にオープンした後、7月に東京・新小岩、8月に埼玉・与野、9月に神奈川・横須賀に開店予定とある。あっという間に10店を超える。

実は神戸物産、「プレミアムカルビ」以前にも、外食店を手がけている。ビュッフェレストランの「神戸クック・ワールドビュッフェ」は関西中心に15店展開。また総菜店の「馳走菜」も39店ある。「プレミアムカルビ」は、そうした展開の延長にあるのだろう。
不思議なことに、神戸物産は外食事業を行うクックイノベンチャーという会社を傘下に持っていたが、それを2020年に経営陣に売却している。クックイノベンチャーの孫会社に当たるのがジャスダック上場企業のジー・テイスト。「焼肉屋さかい」「村さ来」など800店以上を展開する「隠れ大手」で、今後焼き肉事業に経営資源を投入すべく、7月には社名を焼肉坂井ホールディングスに変更するという。

神戸物産としては、コントロールが効きにくく、コロナ禍でリスクが大きい「ひ孫会社」を自立させ、自前の焼き肉事業に本腰を入れようということだろう。
焼き肉食べ放題はかつて、あまり経済的に裕福でない客が「安くおなかいっぱい」になるための店だった。肉の質は今ひとつ。自分で肉を選んでテーブルで焼く仕組みのため、肉や野菜を並べているビュッフェ台は、客が落とした食材が散乱し、どこか寂しさを感じることも否めなかった。
そこに革命を起こしたのが、「焼肉きんぐ」や「ワンカルビ」。高品質の肉と洗練されたサービスで、「少し高いけどおいしくて楽しい」を実現。あっという間に郊外焼肉店の主力になっている。遅れてやってきたトンデモルーキー「プレミアムカルビ」は、どこまでやるのか。業スーを全国に広げた神戸物産のことだから、結構なレベルまでいくことだろう。それは客にとっても幸せなことに違いない。
(フードリンクニュース編集長 遠山敏之)