AIが作った曲の著作権はユーザーに帰属

――AIが生み出した曲を、ユーザーが自由にアレンジできるところも面白いと感じました。

曲を構成する主な要素は、「メロディー」「コード」「リズム」の3つなんです。一般の方にも理解してもらえるよう、アプリ上でそれを可視化しているのも特徴の1つですね。そして、各ボタンをタップすることでミュートにすることも可能。メロディーを消せばBGMとして使えるし、コードを消してオリジナルの演奏を加えることもできます。他にも、BPM(スピード)やPITCH(キー)も変えられるため、それぞれのニーズに合わせて使ってもらえるようになっています。

またアプリ内で写真や動画を撮影でき、そこに曲を乗せられる仕様にしたのは、インスタグラムやTikTokといったSNSでも気軽に使ってもらえることを意識しての仕様です。楽曲の著作権に関してもユーザーのものとなるため、「これで動画に付ける音楽で悩まなくてすむ」といった声もいただいています。

――今後は、どのような展望があるのでしょうか?

AI作曲は、10年後にはもっと当たり前のような存在になっていると考えています。それに現役の音楽家である僕が正面から取り組むことに意味があると思うので、FIMMIGRMをより進化させていきたい。様々な楽器を選べるようにしたり、ほぼ完成形に近い音源を作れるようにするといったことにも、今後は挑戦していきたいですね。

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スズキの視点

今世界中で、音楽制作領域でのイノベーションが起きており、数年前に立ち上がったスタートアップが大型調達をしたり、M&Aされています。AI作曲もその領域ですが、玉井氏はFIMMIGRMを“音楽をより良くする制作プロセス”と定義付けており、そうしたスタートアップは少ないと思います。また、玉井氏のような現役のヒットメーカーが手掛けていることは世界的に見ても珍しく、AIの肝である“学習”の質が高いため、世界に通じるイノベーションになる予感がしています。

鈴木貴歩
ParadeAll代表取締役。“エンターテック”というビジョンを掲げ、エンターテインメントとテクノロジーの幸せな結びつきを加速させる、エンターテック・アクセラレーター。エンターテインメントやテクノロジー領域のコンサルティング、メディア運営、カンファレンス主催、海外展開支援などを行っている。

(構成 中桐基善)

[日経エンタテインメント! 2021年5月号の記事を再構成]

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