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米コロンビア大学教授のジェフリー・サックス氏は、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の理論的支柱となるなど、これからの世界に強い影響力を持つ経済学者の一人だ。新型コロナウイルスによるパンデミックが今なお続く中、世界の今と未来をどのように見ているのか、同氏に聞いた。コロナ後の世界に関心を寄せる作家・コンサルタントの佐藤智恵氏が海外の知の巨人たちに聞いたインタビューシリーズを公開する。

大きな成果上げた気候変動サミット

佐藤 米国のバイデン大統領が主導した気候変動サミットが4月22日から2日間にわたって開催されました。このサミットは40カ国・地域の首脳がオンラインで参加する大規模なものでしたが、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化する中、米国があえてこのサミットを開催した狙いは何ですか。

サックス パンデミック後、いかに世界経済を復元すべきかを考える中で、気候変動問題が避けて通れない喫緊の課題だからです。気温の上昇を抑えるには、全世界が「2050年までに二酸化炭素(CO2)排出量を実質ゼロにする」という共通目標に向かって努力していくことが必要になります。

今回の気候変動サミットでは、世界40カ国・地域の首脳が、温暖化ガス排出削減、再生可能エネルギーの拡大、生物多様性の保全、違法な森林伐採の根絶などを公約しました。中でも米国と日本は、目標達成に向けた強いコミットメントを示しました。これらは大きな成果だと思います。

佐藤 気候変動サミットで菅首相は、温暖化ガスの2030年度の排出削減目標について、「2013年度と比べて、46%の削減を目指す」と表明しました。これは従来の「13年度比26%減」から大幅な引き上げです。日本の方針について、どのように評価しますか。

日本政府の方向性は正しい

サックス 日本政府の方向性は正しいと思います。「2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロ」という目標を達成していく過程で、不可欠な数値目標であったと思います。すべての国にとって、2030年の目標値は2050年の「実質ゼロ」を達成する過程の足がかりでしかありません。産業革命前(注:実際の基準期間は1850~1900年)に比べて世界の平均気温の上昇を、1.5度までに抑えることが必須です。

「1.5度以内」は、2015年のパリ協定で合意された目標です。科学的な見地から見れば、「1.5度以上」になると、急激に温暖化が進むリスクが高まり、危険領域に入ります。そのためすべての政府が一丸となって、「2050年までに二酸化炭素排出量実質ゼロ」に向けた取り組みを行うことが必要なのです。

今年、多くの政府がこの目標にコミットメントを示したことは望ましい動きです。とても重要なのが中国のコミットメントです。中国の習近平国家主席は、今回のサミットで「2060年までに二酸化炭素の排出量を実質ゼロにする」とあらためて表明しました。これは私の予測ですが、中国は目標を前倒しして、2050年までに実質ゼロを達成すると思います。

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