桜の開花は早まる傾向
桜開花の平年値は、ほとんどの気象官署でこれまでより1~2日早くなりました。函館の開花は、2011年の更新で5月3日から4月30日になり、今回の更新で4月28日になりました。もはや大型連休前に開花するのがほとんどで、昔からの桜祭りの期間も再検討をせまられそうです。東京は3月24日で、前回より2日早まりました。
高温傾向が進んでも開花がどんどん早まるとは言い切れません。桜の開花には冬の寒さも必要です。暖冬だと「休眠打破(冬芽から開花への準備開始)」がうまく進まず、例年通りきれいに咲きそろわなかったり、なかなか咲かなかったりする可能性もあります。
また梅雨入りの平年値については大きな変化はなく、東海と関東甲信地方が6月8日だったのが、東海は6月6日、関東は6月7日に。一方、東北北部や沖縄・奄美はこれまでより1日遅くなりました。
さて、そもそもなぜ、WMOでも定められているとはいえ、30年分の平均値なのでしょう? 直近10年くらいでもいいのでは、という声も聞かれます。
その理由は、過去10年にしてしまうと、極端な年の値が入ったときに薄められない可能性があるからなのだそうです。例えば、今年の梅雨入りのように平年より3週間も早くなってしまうと、その後の平均への影響が大きくなってしまうことがあるからです。地域や要素により10年間で十分なものや50~80年程度必要なものもあるようですが、WMOの技術規則でも30年間の統計で定義されています。
日本では70年近く「平年値」を使っていますが、70年前と比べると、平年値も大きく変わっていることでしょう。「昔は冷房を使わずに過ごせた」とか「昔からこのあたりの川があふれたことはない」という高齢者が子どもの頃に過ごした夏と、今の子どもたちが過ごす夏では暑さの程度や雨の降り方も変わっています。
暑さや雨の量を比較するモノサシの目盛りが今年から変わったことを心に留め、この夏の「平年並み」に油断せず、暑さや大雨には早めにしっかり備えましょう。

(文 伊藤みゆき)
[日経xwoman 2021年5月26日付の掲載記事を基に再構成]