卒業生から「東大のオンライン講義は面白くない」という声が出てきている、と語る田村校長

東京電力からの「安心して快適に暮らせる災害に強い街づくりを目指し、自由な発想で新しいサービスを提案してほしい」という課題に対してプレゼンしました。もちろんこのような課題には受験勉強のように1つの正解があるわけではない。単純に勉強が得意な生徒が集まるわけではない。それに魅力を感じて、全国から多数の高校生が参加しています。

勉強や部活だけではなく、社会や企業の課題について、真摯に考え、解決策を模索する生徒は確実に増えています。そんな生徒はただ偏差値が高いと言うだけで大学を選択するでしょうか。自分の将来のキャリアについて真剣に考え、悩み、そのために必要な教育環境を選ぶわけです。今はグローバル社会ですから、海外の大学は当然選択肢に入るのです。難題だった留学に関する費用の問題も、今は孫正義さん(ソフトバンクグループ会長兼社長)や柳井正さん(ファーストリテイリング会長兼社長)など著名な経済人が財団をつくり支援してくれています。

「白熱教室」のような講義を

コロナ禍で、海外大への志望者は減るのではないかと思っていました。しかし、全然そうではなかった。むしろオンラインの普及で、海外大の魅力的な授業がどんどん伝わってくるようになりました。資金面に加え、地理的な距離感という障壁も下がっているわけです。米ハーバード大で政治哲学を専門とするマイケル・サンデル教授。以前NHKが「ハーバード白熱教室」という番組を制作し、話題になりました。そのとき、うちの生徒も参加しました。あのようなすばらしい講義を日本の大学の先生もやっていかないと、選ばれない学校になってしまうことを心配しています。

21年に渋幕、渋渋からも多くの生徒が東大に合格しました。合計で100人になります。しかし、「東大のオンライン講義は面白くない」という声が聞こえてきています。コロナ禍で、対面講義が難しいとしてももっと工夫できると思います。

コロナ禍ですが、今年は渋幕・渋渋では文化祭も体育祭も開催しようと考えています。一部オンラインを活用したり、密を避ける工夫をしたりして、実施していきます。各行事は生徒がみんなで考え、企画して実行する。モチベーションも高まり、自律的な生徒を育てるいい機会になります。

今は、学歴などのブランドで学校を選ぶ生徒はだんだん少なくなっています。グローバル社会の未来を見据え、将来のキャリアにプラスとなることを意識して、自分自身で進路の判断を下す生徒は少なくありません。コロナ禍の中、日本の大学も創意工夫して海外大に負けない魅力的な学校づくりを目指してほしいと考えています。

田村哲夫(たむら・てつお)
 麻布高校を経て東京大学法学部卒、1958年に住友銀行(現三井住友銀行)に入行。62年に退職し、父親が運営していた渋谷女子高校を引き継ぐ。70年から渋谷教育学園理事長。校長兼理事長として83年に同幕張高校、86年に同幕張中学をそれぞれ新設。96年に渋谷女子高を改組し、渋谷教育学園渋谷中学・高校を設立。日本私立中学高等学校連合会会長も務めた。
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