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仲間との食事で元気に スタジオジブリ・鈴木敏夫さん

食の履歴書

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NIKKEI STYLE

小さな丸メガネの奥。悪戯(いたずら)っぽい瞳ながら、眼光炯々(けいけい)。心を見抜かれたような気持ちになる。スタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫さん(72)は、日本アニメを国内外に知らしめた立役者だが、原動力は才能や手腕ではなく「食べるため」と言い切る。

「お米、水に浸しとくね」。夕食の支度をするスタッフたちが気になるのか幾度も足を運ぶ。料理はからきしだが、1日3度、キッチンでの無駄話は格別だ。家族や仲間と食卓を囲むことはルーティンの一つ。理由は、「おいしそうに食べる人たちから元気をもらえるから」。

にぎやかな食事が当たり前の光景だった。既製服の製造販売を営む両親と妹の4人家族で名古屋市で育った。十数人いた社員と長テーブルを囲み、毎昼、総菜屋から届く弁当を食べる。「食事は大勢でするものって、すり込まれちゃったのかな」と振り返る。

「食べることは生きることだった」と言い切る。幼年期は戦後の復興期、「出されたものを黙って食べなさい」が母の口癖。小学校には弁当を持ってこられない同級生が数人いた。おいしい、まずいに関係なく食べ物があることで幸せだった。

焼き魚、野菜の煮付け――。両親が共働きだった鈴木さんには、近所のスーパーや総菜屋で買ったおかずが「おふくろの味」だ。中学高校時代の弁当はごはんと缶詰1つ。「母の忙しさは理解していたけど、恥ずかしかった」

とはいえ、合理的な考えだと振り返る。幼年、青年期に大勢で楽しんだ"食"にまつわる経験がプロデューサーとしての礎につながった。

「特技は、エレベーターで乗り合わせた人でも友達になれる」というほどの"人好き"。「作家は『自己中』。正直苦手だった」が、元来の人好きが幸いして、故手塚治虫、ちばてつやなど著名作家にも気に入られた。

宮崎駿監督、故高畑勲監督の才能を見い出し、支えると決めたのは「金になると思ったから。大物ではなく才能ある若い作家を見つけて育てれば長くメシが食べられる」。鈴木さんなしでは世界的なスタジオ発足と、日本のアニメ映画の芸術性や実力が世界に周知されることはなかった。

雑誌編集長、プロデューサーと二足のわらじの時期も、鈴木さんを癒やしたのは食事だった。月1回社員らと食卓を囲むため、自宅フロアをぶち抜き60畳の部屋を造った。

朝イチに調理が始まり、夜更けまで笑い声が絶えない。下戸で一滴も飲めないが、仲間との会話に酔い、頬が緩む。会合はジブリ専属になるまで続いた。

「鈍感男」と自称するのは、責任に押しつぶされたら無意味だから。「周りを気にせず、いつでも気楽にやる」がモットーだ。

映画最大級の祭典、米アカデミー賞の赤じゅうたんを作務衣(さむえ)、草履(ぞうり)姿で歩いたのは有名な話。「上下で8000円。近所で買ったけど新品ですよ」。体裁よく見せるわけでも、ナルシストでもない。純朴さも人を引きつける。

外食にも"鈴木流"が貫かれる。和食、イタリアンなど一覧表を作り「気に入った店に通い続ける」。価格や知名度には興味がない。味はもちろん、「調理人との会話、人柄も大切なポイント」。ひいきの店の多くが家族経営で、後継者難から廃業するのが悩み。「コロナ禍での経営難も加わった」と憂慮する。

黒いパエリア――。好き嫌いはないが、唯一口にできなかったものだ。宮崎監督、スタッフ数人と視察で訪れたポルトガル郊外。テーブルに届いたパエリアはたかったハエで真っ黒だった。「食おう!」と宮崎監督。監督らは「翌日、トイレから出られなかった」と笑う。

さすがに毎晩の夕食会は控えているが、妻、子供、孫らを招いた食事は楽しみの一つ。何を食べる、誰を誘う、どんな話をする――。人のために一生懸命になることが楽しい。天性なのだろう。「自分から手を挙げることはなかったが、行事からケンカの仲裁まで子供のころからまとめ役だった」

相手の話をじっと聞く。雑談に時間を費やし関係を築く。仕事でも同様、何かを押しつけることはないが、気付けば誰もが鈴木さんのペースに引き込まれている。

鴨長明、堀田善衛、半藤一利の名が、度々、会話に登場する。共通するのはノンフィクション(実話)作品を手掛けたことだ。事実を俯瞰(ふかん)する視点がプロデューサーに求められる資質だそうだ。

【最後の晩餐】

よく聞かれるんですよ、それっ。最後は何を食べてもいいけど……。卵かけごはんですかね、シンプルに。それも黄身だけの。卵をパカッと割って白身と分けるのもうまいんですよ、自慢したいくらいです。さっと食べたい。でも、このときは一人がいいかな。

3代目独自の土鍋ご飯

旧築地市場(東京・中央)と築地本願寺(同)近くの路地裏に「魚がし 山はら」(電話03・3541・0050)はある。コース料理(1万2500円)が中心。春夏は「鯛(タイ)と筍(タケノコ)」(=写真左上)や「穴子(アナゴ)と夏野菜」(=同手前)、「蒸しホタルイカ」(=同右上)の土鍋ご飯がメインだ。

旧築地市場内の店舗を2018年に移転した。土鍋ご飯は3代目の片又俊郎さんのオリジナル。ベースの出汁は同じだが、「具材ごとに違った味わいになる」(片又さん)。

冬期限定のあんこう鍋(コース1万3500円)は大人気。「どれも絶品。片又親子との会話が何よりも楽しい」(鈴木さん)。先代の弘行さんは息子に調理場を譲っているが、時折店に顔をのぞかせ常連客との雑談に花を咲かせる。予約が必要だ。

(文 佐々木聖)

すずき・としお 1948年名古屋市生まれ。72年慶応大文卒、徳間書店入社。雑誌記者、編集を経験。85年スタジオジブリ設立に参画、89年から専従。ノンフィクション小説を含む著書も多い。ラジオパーソナリティー、書道家としても活躍する。

[NIKKEIプラス1 2021年5月29日付]

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