つくり方については本書の第2~4章に具体的な手順が示されていますが、要点は大ざっぱにいえば、自社を知り、顧客を知り、他社を知る――ということでしょうか。

著者は専門的で少々難解な「戦略分析」「顧客洞察」「パターン適合」の3つの手法を挙げます。それを「分析→発想→試作→検証」のサイクルに乗せて仮説を導き、繰り返し仮説を検証する作業です。「戦略分析」とは伝統的に使われる「SWOT分析」というのがそれで、経営資源(内部要因)と外部環境(外部要因)に分け、それぞれ自社の強みと弱みを整理します。市場での自社の立ち位置を客観的に把握しておけば、打つべき対処法も発見しやすくなるというわけです。

第二の「顧客洞察」は、誰が顧客で、どんな課題があるかを聞き取り、それをどう解消するかを考えます。「顧客の悩み」という要素が強く、数値やデータなど客観性に欠ける印象を受けますが、顧客と実際に会い、言葉を交わして共感や要望を得られれば、ビジネスチャンスにつなげられるかもしれません。

最後の「パターン適合」は自社と同じ課題を抱えそれをうまく乗り越えた「お手本」を異業種や他国の企業に求めるというアプローチです。著者は「創造的模倣」という言葉を使い、事業モデルを他社から模倣して成功した世界的な大企業の事例をいくつか紹介しています。そのうちの一社、トヨタ自動車の有名な「ジャスト・イン・タイム」生産方式も実は米国のスーパーマーケットの仕組みを参考に生まれたといいます(58~59ページ)。

デジタル化がもたらすビジネスモデルの「パラダイムシフト」

「パラダイムシフト」とは、ある時代における支配的な物の見方が転換することを指す言葉です。デジタル化の奔流が従来型のビジネスモデルに変化を迫っています。スマートフォンのアプリやSNS(交流サイト)を使って利用者個人がネットワーク上で自由に製品やサービスをやりとりするようになり、それにビジネスの着想を得た企業が相次いで新サービスに参入しています。

著者はモノを中心とした、生産にコストのかかる従来ビジネスから、デジタル時代は稼ぎ方が変わったと指摘。デジタル財はコストがかからずネットの発達で流通も容易になり「財を開発して生産するときのコスト構造が抜本的に変わり、収益設計のあり方が多様になった」(18ページ)とビジネスモデルのパラダイムシフトを主張します。

米アップルのスティーブ・ジョブズの死から今年で10年。今なお製品やサービスが世界中で高い評価を受け、企業が成長を続けていることに触れ、こう表現しています。

経営者の役割は時計づくりにたとえられます。単発のヒット商品を生み出すのではなく、自分がこの世を去っても、ヒット商品を出し続けられるような仕組みづくりが大切だということです。
(第7章 売り切りからサブスクリプションへ 144ページ)

ビジネスモデルのパラダイムシフトは具体的にどう進んだのでしょうか。著者は独自に5つのビジネスモデルで分類しています。(1)自前主義→オープンイノベーション(2)価値連鎖(例えば自動車の生産工程のように材料調達、部品加工、組み立て、販売と段階的に価値が加わる直線モデル)→プラットフォーム(3)売り切り→サブスクリプション(4)有料が当たり前の世界→フリー(5)所有→シェア――。デジタル化の進展とともに誕生した新しいモデルです。

本書ではこの5つのモデルを第5章から第9章にわたり全体の半数近いページを割いて新旧を比較し、図表を交えて初学者にもわかりやすく解説を試みています。

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