オーナー社長はどんなに優秀な方と縁があったとしても、後継候補者に完璧を望みすぎないことです。オーナー社長ほど自社を理解・熟知している人はおらず、同じことを求めること自体がナンセンスです。それは素晴らしく、誇らしいことであるとともに、後継候補者と張り合うことではなく、しっかり後継候補者に引き継ぐべき会社のDNAなのです。

一方、後継候補者はオーナー社長を心から尊敬することです。その気持ちなくして、引き継いだ会社の従業員が自身に付いてくるということはありません。オーナー社長の後ろ盾を得ることもうまく引き継ぐためには必須です。その上で、どこまではオーナー社長が会社を見て(例えば会長になってもらうなど)、どこからは後継社長である自分で決裁していくかを擦り合わせ、合意しておくことが大事です。できれば従業員たちにもその役割分担を共有しておくことが望ましいでしょう。

後継候補者がやる気と野心を出し過ぎることが、せっかくの良いバトンタッチの芽を摘んでしまうことがありますので、気をつけください。

ファンドが送り込むプロ経営者

2番目は買収元のファンドが後継候補者を送り込むパターンです。こちらは幹部転職としてはこれまでも多くありました。創業家からファンドにオーナー権が渡っており、経営参画時の状況や意思決定ルートもおおむね把握できているため、分かりやすい状態で着任できるでしょう。このケースに臨む後継候補者には「ファンド」「従業員」(場合によって「オーナー」が一部残るケースもあります)の各方面としっかり良好な関係を構築することが重要です。

ファンドに対しては四半期ベースでの定期的な経営状況の開示が求められ、事業や組織改革などの進捗について数値で論理的・客観的に説明できる力が必須です。局面としては事業再生フェーズにあることが多く、社内環境は良好とは言えないことが少なくないでしょう。沈滞あるいは殺伐とした社内のムードを一新し、元気づけるムードメーカーであることが望ましく、現状を速やかに把握した上で具体策を迅速に繰り出せる力が求められます。

ファンドとしては事業再生で企業価値を上げ、一定期間(3~7年程度)の間に次の会社に売却することがゴールです。売却後もそのまま現任として残る場合もありますが、基本的にはファンドのエグジット(資金回収)と共に自分も退職する前提でキャリアを考える必要があることも認識してほしいです。こうした各要件を満たすプロ経営者が好まれるのがファンド投資先案件と言えるでしょう。

裾野が最も広い中継ぎ役

第3は経営者の子供が社長を引き継ぐ前提で、中継ぎ役を採用するパターンです。これも転職としては分かりやすいです。この連載で以前紹介したことがあるのですが(「70歳現役は目前 40代から描く3つのキャリアプラン」)、私の父がこのパターンで転職しました。父のケースもそうでしたが、UIターンで地元の中堅・中小企業にはこうしたニーズが非常に多く、なまじ大手企業で働くより長く活躍でき、経営幹部になれば給与が逆転するケースも少なくありません。地元志向やローカル生活志向を持っているならば、積極的に検討することを勧めます。

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