DINKS向けリニューアルの伸び悩みを経て土鍋に回帰

同社も手をこまぬいていたわけではない。14年8月には、40代のDINKS(共働き・子供無し世帯)に向けた新ブランド「GRAND X(グランエックス)」シリーズを立ち上げ、高級調理家電(炊飯器、ホームベーカリー、陶板焼き器、スーププロセッサーなど)のデザインをある程度統一。生活シーンをまとめて訴求するという戦略に出た。この期間に発売した炊飯器(GRAND X THE炊きたて)は、国際的なデザイン賞を受賞するなど、スタイリッシュなデザインが高い評価を受けたものの、売り上げはさほど伸びなかった。

14年に発売した「GRAND X THE炊きたて JPX-A100」

GRAND Xの伸び悩みを受けて、同社は18年に「土鍋」に原点回帰することを決めた。タイガー魔法瓶で商品企画を担当する辻本篤史氏は、「自分たちはタイガーの炊飯器=土鍋と考えていたが、顧客調査をしてみるとそれはほとんど浸透しておらず、良さが伝わっていなかった」と振り返る。

そこで、19年発売の「JPG-S100」では、まず上位モデルのブランド名を「土鍋ご泡火炊き」と変更した。数年ぶりに「土鍋」の文字を強調して、土鍋から出る泡でご飯がおいしく炊けるというイメージを込めた。

その上で、土鍋の長所を伸ばし弱点を消す施策を取った。土鍋の特徴を生かしたのが「一合料亭炊き」機能だ。炊飯器の売れ筋は5.5合炊き(1リットル)だが、2人暮らしの場合は1合しか炊かないことも多い。

しかし、5.5合炊きの炊飯器で少ない量の米を炊くと、炊飯空間が広すぎて、米に1粒ずつ均等に熱を伝えることが難しくなる。そこでJPG-S100では、1合炊き専用の「土鍋中ぶた」を付属。これを内釜の上に載せれば1合でもおいしくご飯が炊ける。「一合料亭炊きは、中蓋のある普通の土鍋から着想した機能。炊飯器でも、土鍋の内釜は型を基に作るので、中蓋をぴったり載せる溝を作りやすかった」(辻本氏)

「1合炊き」に注目したのは、子供が独立した中高年世帯を狙ったから。「子供の帰省時など来客があるときには4~5合炊きたいが、普段は夫婦2人なので1合炊ければ十分」というニーズを掘り起こそうとしたのだ。

「一合料亭炊き」機能で使用する中蓋。載せると炊飯空間が小さくなり、1合でもおいしく炊ける。20年発売のJPL-A100では、0.5合の炊飯にも対応するようになった

そして、土鍋の弱点解消を狙ったのが「5年保証」だ。これは、5年以内に内釜が割れたりフッ素加工がはがれたりした場合は新品と交換するという制度。炊飯器の内釜は通常の土鍋よりも丈夫で割れることはあまりないが、「買うときに心配するお客様が多いので、その不安を払しょくした」(辻本氏)

上位機種の土鍋は三重県四日市市の「四日市萬古焼」を使用している(写真は、20年発売のJPL-A100の内釜)

これらの新機能や施策は一定の効果があり、JPG-S100は販売台数が前年比で150%に伸びるという成功を収める。しかし、辻本氏ら開発陣は満足はしていなかった。「戦略が当たったのは事実だが、まだ上位2社に比べると大した台数ではなかった。また一部使いにくい機能もあり、改良の余地はあると考えていた」(辻本氏)

19年発売の「土鍋ご泡火炊き JPG-S100」
次のページ
50周年の好機を生かし、デザインを一から見直す
MONO TRENDY連載記事一覧