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炊飯器の売り上げ1.6倍に タイガーが「土鍋」に回帰

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日経クロストレンド

炊飯器の売れ筋は2万~5万円の製品だが、10万円以上の高級炊飯器も市場の1割ほどを占める根強い人気があり、各社が少しでもおいしく炊くための最新技術でしのぎを削っている。

この高級炊飯器市場で、2020~21年に大躍進があった。象印マホービン、パナソニックに次ぐシェア3位が指定席だったタイガー魔法瓶が販売を前年比165%と大きく伸ばし、2位を争うまでになったのだ。

その立役者となったのが、同社「炊きたて」シリーズの50周年モデルとして20年9月に発売された「土鍋ご泡火(ほうび)炊き JPL-A100」である。4~5年前と比べれば、同社の高級炊飯器のシェアは2倍以上になっている。

しかし、同社の20年モデルに突如として魅力的な新機能が搭載されたわけではない。この成果をもたらしたのは、2年前からの「土鍋」への原点回帰と、「炊きたて」ブランド50周年を契機に敢行したユーザー目線での刷新だと言える。

タイガー魔法瓶の高級炊飯器の特徴は、内釜(内鍋)に土鍋を使用していること。一般的なIH炊飯器は、磁力線の働きで内釜の底や側面を発熱させることで米が炊ける。同社は、06年の「炊きたて JKF-A100」から、陶土を素材とした土鍋を採用している。土鍋は、一般的な金属製の内釜に比べて蓄熱性が高く、強い火力を継続しやすい。また加熱時に細かな泡が連続して発生する。この泡によって米が自然に動いて、一粒ずつむらなく熱が伝わる効果があるという。

土鍋の採用が業界初だったこともあり、10年ごろまではタイガー魔法瓶のシェアも好調に推移した。しかし、やがて他社も工夫を凝らした内釜をアピールするようになる。象印マホービンは、南部鉄器を使用した「極め羽釜」を11年に開発。12年には、パナソニックも塗料の厚みにより断熱効果を向上させた「ダイヤモンド竈(かまど)釜」を採用した。その結果、タイガー魔法瓶の土鍋の目新しさは薄れてしまった。

DINKS向けリニューアルの伸び悩みを経て土鍋に回帰

同社も手をこまぬいていたわけではない。14年8月には、40代のDINKS(共働き・子供無し世帯)に向けた新ブランド「GRAND X(グランエックス)」シリーズを立ち上げ、高級調理家電(炊飯器、ホームベーカリー、陶板焼き器、スーププロセッサーなど)のデザインをある程度統一。生活シーンをまとめて訴求するという戦略に出た。この期間に発売した炊飯器(GRAND X THE炊きたて)は、国際的なデザイン賞を受賞するなど、スタイリッシュなデザインが高い評価を受けたものの、売り上げはさほど伸びなかった。

GRAND Xの伸び悩みを受けて、同社は18年に「土鍋」に原点回帰することを決めた。タイガー魔法瓶で商品企画を担当する辻本篤史氏は、「自分たちはタイガーの炊飯器=土鍋と考えていたが、顧客調査をしてみるとそれはほとんど浸透しておらず、良さが伝わっていなかった」と振り返る。

そこで、19年発売の「JPG-S100」では、まず上位モデルのブランド名を「土鍋ご泡火炊き」と変更した。数年ぶりに「土鍋」の文字を強調して、土鍋から出る泡でご飯がおいしく炊けるというイメージを込めた。

その上で、土鍋の長所を伸ばし弱点を消す施策を取った。土鍋の特徴を生かしたのが「一合料亭炊き」機能だ。炊飯器の売れ筋は5.5合炊き(1リットル)だが、2人暮らしの場合は1合しか炊かないことも多い。

しかし、5.5合炊きの炊飯器で少ない量の米を炊くと、炊飯空間が広すぎて、米に1粒ずつ均等に熱を伝えることが難しくなる。そこでJPG-S100では、1合炊き専用の「土鍋中ぶた」を付属。これを内釜の上に載せれば1合でもおいしくご飯が炊ける。「一合料亭炊きは、中蓋のある普通の土鍋から着想した機能。炊飯器でも、土鍋の内釜は型を基に作るので、中蓋をぴったり載せる溝を作りやすかった」(辻本氏)

「1合炊き」に注目したのは、子供が独立した中高年世帯を狙ったから。「子供の帰省時など来客があるときには4~5合炊きたいが、普段は夫婦2人なので1合炊ければ十分」というニーズを掘り起こそうとしたのだ。

そして、土鍋の弱点解消を狙ったのが「5年保証」だ。これは、5年以内に内釜が割れたりフッ素加工がはがれたりした場合は新品と交換するという制度。炊飯器の内釜は通常の土鍋よりも丈夫で割れることはあまりないが、「買うときに心配するお客様が多いので、その不安を払しょくした」(辻本氏)

これらの新機能や施策は一定の効果があり、JPG-S100は販売台数が前年比で150%に伸びるという成功を収める。しかし、辻本氏ら開発陣は満足はしていなかった。「戦略が当たったのは事実だが、まだ上位2社に比べると大した台数ではなかった。また一部使いにくい機能もあり、改良の余地はあると考えていた」(辻本氏)

50周年の好機を生かし、デザインを一から見直す

通常なら、リニューアルした次のモデルはマイナーチェンジにとどまることが多いが、全面刷新の機会は意外に早く訪れた。20年に同社の「炊きたて」ブランドが50周年を迎えるため、次の「土鍋ご泡火炊き JPL-A100」をその記念モデルとして開発することになったのだ。これにより、「情報収集力のある若い開発者を多く抜てきするなどの思い切った開発が可能になった」(開発を統括した炊飯器ブランドマネージャーの岡本正範氏)

こうして開発された新モデルのJPL-A100には、明確な2つの変化があった。1つは従来のスタイリッシュなデザインから、釜や土鍋のイメージに近い丸みを帯びた形状になったこと。「前モデルのクールなイメージから、温かみややさしさを想起させるデザインに変更した。以前は製造しやすいデザインにする傾向がなかったとは言えないが、今回はフリーハンドで描かれたデザインを優先し、生産ラインに落とし込んでいった」(辻本氏)という。

例えば、背面から見た際に本体と蓋をつなぐヒンジが見えないように処理されている。これには「対面型のキッチンで使われることも想定して、360度どの方向から見ても質感が高く見えるようにした」(辻本氏)という意図がある。

もう一つの大きな変化は、上面の操作ボタンと液晶パネルだ。前モデルのJPG-S100は、タッチパネルとタッチセンサー式のボタンでほぼすべての操作ができた。このため、電源がオフのときにはボタン類が見えなくなっていた。デザイン的にはこちらの方がスマートだが、「店頭などで調査をしてみると、年配の方には『使いづらそう』と言われることがあった」(辻本氏)。

そこで新モデルでは、よく使う「炊飯」「予約」「取り消し」の3つは物理的なボタンとして独立させ、さらに液晶画面も従来の2倍に拡大。この画面サイズは他社製品と比べても大きく、使いやすさを強調するのに役立った。

この他、保温時に外気を取り込むことでご飯の香りや弾力を保つ「おひつ保温」や、50種類の米の銘柄に合わせて設定を自動変更する「銘柄巧み炊きわけ」などの新機能も搭載している。テレビCMでも、「『土鍋で炊いたご飯はおいしい』というメッセージを発したときに説得力がある、伝統と革新を感じさせる人」(辻本氏)との理由で市川海老蔵を起用した。

同社は、前モデルのJPG-S100でも「一合料亭炊き」機能などで中高年世帯の取り込みを狙っていたが、結果的には不十分だったといえる。新モデルにおいて、デザイン、ユーザーインターフェース、CMのすべてで、中高年世帯が受け入れられる施策を打てたことが、躍進につながったのだろう。

21年5月13日には、成果を上げたJPL-A100のデザインを継承しつつ、高温の蒸らしで甘みを引き出すなどの新機能を加えた最新モデル「土鍋ご泡火炊き JPL-G100」を発表(発売は21年6月21日)。21年下半期は、勢いを持続できるか真価が問われる。

(日経トレンディ 大橋源一郎、写真提供 タイガー魔法瓶)

[日経クロストレンド 2021年5月17日の記事を再構成]

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