忙しさやおっくうさから、おざなりになりがちなのが「体を動かすこと」ではないだろうか。「動かない生活や体力の低下は、メタボだけでなく、死亡率や認知症にも関わります。そのリスクは40代ぐらいから進行していることもわかってきました」と、順天堂大学大学院代謝内分泌内科学・スポートロジーセンター先任准教授の田村好史さんは言う。「動かない生活」がどのように健康リスクにつながっているのかを聞いた。
座り時間が長いと死亡率が高くなる
「私が治療現場で対面しているシニア世代では、新型コロナによる健康二次被害といえる状況が起こっています」。糖尿病や肥満症の治療に当たり、日ごろから患者さんと接している田村さんはこう語った。
田村さんによると、シニア世代には「これまでと変わらず外に出て運動をする人」と、「感染を恐れて、一切外に出ない人」という二極化が起こっているという。感染を拡大させないためにも外出を自粛することは重要だが、別のリスクも増えるという。
「外出自粛で活動量が大幅に減ると、筋肉が減り、筋力が低下してしまいます。健康な高齢者が2週間、あまり動かない生活を送ると、脚の筋肉量が3.9%減少したという報告もあります[注1]。60歳から80歳にかけては、1年あたり約1%ずつ下肢の筋肉量が低下するので、不活動状態でいると、単純計算はできませんがわずか2週間でも老化が進むといえるかもしれません」(田村さん)
[注1]J Clin Endocrinol Metab. 2013 Jun;98(6):2604-12.
もちろんシニア世代だけが問題なわけではない。働き盛りの人にもリモートワークによる弊害が出てきている。リモートワークで明らかに長時間化しているのが「座り(座位)時間」。この座り時間と死亡率の関係を調べた調査がある。約100万人を対象にした13の研究を解析したところ、座り時間が長くなり、身体活動量が少なくなるほど死亡率が高くなるというのだ(下グラフ)。
座る時間が長くなり身体活動量が少ないと死亡率が高くなる
デスクワーク作業が長くなることは職業柄避けられない人であっても、できるだけ歩数を増やすように意識をしないと、健康リスクを高めてしまうことがわかる。