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食料生産が引き起こす大気汚染 1.6万人の死を早める?

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

人々の健康を害し、主要な死亡原因にもなっている大気汚染は、自動車の排出ガスや工場、発電所の煙突から出る汚染物質と関連付けられることが多い。ところが、米国では農業の食料生産で排出されるPM2.5(直径2.5マイクロメートル以下の粒子状物質)による大気汚染で、年間約1万6000人が早すぎる死を迎えているという研究結果が2021年5月10日付の学術誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」に発表された。しかも、そのうちの80%は、食肉、乳製品、卵など動物性食品の生産に関連するという。

カーボンフットプリント(温暖化ガス排出量)や土地・水利用など、特定の食品が環境に与える影響については10年以上前から研究されてきた。だが今回の論文は、どの食品が最も大気汚染を引き起こしているかを分析し、喘息、心臓発作、脳卒中の原因となる大気汚染に最も影響を与えている食品や食習慣を特定した初の研究結果だ。

食料以外にも、エタノール、皮革、羊毛などの生産も死者数を引き上げている。これらすべてを合わせると、農業全体により生じるPM2.5による大気汚染は、年間1万7900人の早すぎる死の原因になっていると論文は結論付けた。

「私たちは、体内に取り込む食品がいかに自分の健康に影響を与えるかということばかり考えてしまいがちですが、私たちが食べるものは他の人の健康にも影響を与えているのです」。論文の筆頭著者であるニナ・ドミンゴ氏はこのように述べた。

論文の最終著者で、米ミネソタ大学のバイオシステムエンジニアであるジェイソン・ヒル氏は、「気候変動の長期的影響はあまりに規模が大きすぎて心がくじかれそうですが、この大気汚染は、今現在も人の命を奪っているのです。大気を汚染する物質は毎年排出され、人々に影響を与え、生活の質を低下させています」と話す。

一方、業界団体からは、批判的な声が上がっている。全米肉牛生産者・牛肉協会(NCBA)は、「論文は不完全な仮説に基づいており、データは穴だらけ」「誤解を招き」「畜産に対する誤った見方を広めてしまう」などと批判した。米農業連合会(AFBF)も同様に「原因と結果の定義を拡大解釈しすぎている」と主張する。

これに対してヒル氏は、米環境保護局と農務省による査読済みの公式データを基にしていると反論した。

「すべてのモデルは専門家による査読を受けており、私たちのグループだけでなく、他にも多くの研究者に広く使用されています」

大気汚染を招きやすい食品は

動物性食品の健康への影響を測るために、研究チームは、その生産に何が必要かを調べた。動物を飼育するには、飼料となる作物を育てる必要がある。作物を育てるためには、肥料を与え、土地を耕作し、ディーゼルエンジンのトラクターを使用する。家畜の排泄物も適切に処理しなければならない。

「農業のなかで、畜産業が果たす役割はきわめて大きいです。家畜だけでなく、その家畜に与えるエサも、かなりの部分を占めています」と、ヒル氏は言う。

たとえば論文によると、食用、燃料、動物の飼料にもなるトウモロコシを育てるだけでも、大気が汚染され、年間3700人の早すぎる死につながっているという。肉用牛を育て、飼料となる作物を育てれば、その大気汚染による早期死者数は年間4000人。これに肉用豚と乳牛を加えると、死者数は年間9100人になる。

一方、食用トウモロコシを含む野菜の栽培による早期死亡は、年間100人だった。

持続可能で健康的な食事で死者が減る

論文はさらに、農業による大気汚染を減らすために農家や消費者にもできる様々な対策を提案している。農家の場合、家畜の排泄物処理法の改善や効率的な肥料の使い方など、ここで提案されていることをすべて実行すれば、年間7900人の命を救えると推定されている。つまり、食料生産の影響を半減できる。

個人にもできることはある。牛肉や豚肉ではなく、鶏肉を多く消費するようになれば、年間6300人の命が救われる。さらに、英医学誌「The Lancet」などによる「EATランセット委員会」が提唱するように、ベジタリアン、ビーガン(絶対菜食主義)、またはフレキシタリアン(肉食を減らすが完全に断つわけではない)などの持続可能で健康的な食事に移行すれば、計1万700人~1万3100人の早期死亡を防げるという。

有害な微粒子PM2.5を追跡

どの食品や食習慣が大気汚染を助長しているかを知るため、この研究では環境保護局による「全米大気汚染物質排出リスト(NEI)」のデータを採用した。

「大気汚染を引き起こしているすべての排出源を網羅した大変詳細なリストです。なかでも、PM2.5は最も大きな影響を与える汚染物質です」と、ヒル氏は言う。

研究チームは、大気汚染による米国の死者数が年間10万人と推定する研究に基づいて、PM2.5の影響をモデル化した。ただし、この数字は資料によって6万~20万人とばらつきがある。

直径2.5マイクロメートルのPM2.5は、毛髪の太さの30分の1以下という微小粒子状物質で、森林火災、自動車の排出ガス、工場排出など、あらゆる場所で発生する。人間が吸い込めば、肺に入り込んで呼吸器疾患や心臓疾患の原因となる。

農業では、粉塵や土地の耕作、トラクターのディーゼルエンジンによる排出ガスなどでPM2.5が発生する。また、肥料や堆肥、動物の排泄物処理池から出るアンモニアガスも大気中で化学変化を起こし、微粒子に変化する。

これらをふまえ、データを使って3つの複雑なモデルを実行し、PM2.5が大気中をどのように移動して、どれくらいの人々がそれを吸い込むかを検証した。さらに国勢調査のデータを使って、時間とともにどれくらいの人に健康被害が現れるかを推測した。

「一定量の有害物質に人口全体がさらされれば、それが原因で、一定人数がいずれ死に至ります」と、ヒル氏は言う。

大気汚染は人口密集地だけの問題ではない

PM2.5を吸引すると、呼吸器系が刺激され、体の免疫系が応答して、異物を攻撃するよう命令が出される。すると、体はサイトカインと呼ばれるタンパク質を作り出す。このサイトカインは「問題が発生しました。炎症反応を開始してください、というメッセージを送ります」と、ミシガン州立大学の毒物学者ジャック・ハルケマ氏は解説する。なお、ハルケマ氏はこの研究には参加していない。

長期間にわたり大気汚染物質を吸引し続けていると、免疫系は常に応答し続けなければならなくなり、いずれは呼吸器系以外の他の部分までもが損傷を受ける。

「PM2.5が肺に直接与える影響についてはわかっています。肺疾患や喘息などの慢性的な炎症を起こすのです。けれど、心臓血管への影響となると、話は少し違います。サイトカインが心臓やその他の部分へ運ばれて、そこで炎症反応を起こすと考えられています」。PM2.5は神経系に損傷を与え、血栓が生じやすくなり、心臓発作を起こしやすくなることで知られている。

オバマ政権時代に環境保護局の大気汚染防止科学諮問委員会に加わっていたハルケマ氏は、この研究により、大気汚染は人口密集地の問題であるという人々の誤解が払拭されることを期待している。

(文 SARAH GIBBENS、訳 ルーバー荒井ハンナ、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月15日付]

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