安藤先生 まず大学教員としては、学生の皆さんには講義やゼミなどを通じてしっかりと学んでほしいと考えています。それがおろそかになってしまってはもったいないですね。また友人や同級生などとの交流を通じて学ぶことも多いはずです。それなのに就活が不安だからといって、インターンだけに貴重な学生生活の時間を多く使ってしまうのは本末転倒です。
加えてインターン学生のことを安く使える都合の良い労働力として捉えている企業も、残念ながら存在しています。そのためにインターン先企業の評判も応募する前によく調べておく必要があります。
蒼太 そうですよね。インターンに応募する場合に、よく考えて準備する必要があるのはわかりました。
「ガクチカ」に使える?
安藤先生 もう1つ注意してほしいのは、インターンでの体験を自己PRとして使用するのはかなり難しいという点です。
就活では「学生時代に頑張ったこと・力を入れたこと」を尋ねられる機会が多くあります。いわゆるガクチカですね。ここに数日や長くても2週間程度のインターン体験を頑張ったこととして挙げたとします。
大学に入ってから就活までのおよそ3年間の中で頑張ったことが、インターンですと言われたら採用担当者はどのように考えるでしょうか?
蒼太 うーん、おそらく「頑張ってきたことはそれだけ?他にないの?」となりますね……。
安藤先生 そうです。しかも、そのインターンが他社での経験だったら、採用担当者からすると魅力的な学生には見えない可能性が高いでしょう。
したがって就職活動においてインターン経験の使い方を間違えないでほしいのです。以上をまとめると、
・インターンの経験を就活において効果的に伝える使い所はどこかをよく考えておく
・インターンをするということにとらわれすぎず、本当なら自己PRにつながるはずの自分の活動をおろそかにしない
ということが必要ですね。
ここで「効果的に伝える」ということについては、先ほどもお話ししたように、志望企業への志望度の高さを伝えるためにインターンへの参加が効いてきます。例えば会社側が面接などにおいて「なぜうちの会社を志望したのか?」を尋ねることはよくあります。その意図は、「業界一位の○○社ではなく、業界で中堅の当社を志望した理由は何か?」といった点を知りたいわけです。また大手企業の本社ではなくグループ会社に応募したときなども、なぜ本社ではないのかを知りたいわけですね。このとき、その企業や関連する企業でインターンを行っていれば、明確で説得力のある理由が答えやすくなるでしょう。
蒼太 ああ、確かにそうですね。インターンをしていれば、なぜその会社で働きたいのかをうまく伝えられるような気がします。
安藤先生 はい。ところでいま「なぜその会社で働きたいのかをうまく伝えられる」と言いましたね。それはとても大事な考え方です。
前回、学生だけではなく企業や採用担当者側も不安だという話をしました。そして相手が不安を感じているなら、それを解消することができれば、その企業は安心してあなたの採用を決定できます。いまの「うまく伝える」というのも、相手の不安要素を取り除いていくために必要な取り組みと言えます。
このように相手の不安要素を解消することこそが就職活動というゲームの攻略ポイントなんです。
蒼太 就職活動という「ゲーム」、ですか?
(次回へ続く)
日本大学経済学部教授。2004年東京大学博士(経済学)。政策研究大学院大学助教授、日本大学大学院総合科学研究科准教授などを経て、18年より現職。専門は契約理論、労働経済学、法と経済学。厚生労働省の労働政策審議会労働条件分科会で公益代表委員などを務める。著書に「これだけは知っておきたい 働き方の教科書」(ちくま新書)など。