2012年、養蜂協同組合は同業者とともに、遺伝子組み換え大豆を許可した政府機関を起訴した。許可の決定に際して、先住民社会に意見を求めなかったのは違法だというのが理由だ。
養蜂家たちの主張では、育てているミツバチは餌を探して最長で7キロ移動するため、メノナイトが小型飛行機から散布する農薬にいや応なくさらされるという。12年、科学者たちはカンペチェ州から出荷された蜂蜜のサンプルを集めて分析し、研究結果を発表した。それによると、ミツバチは大豆の花粉を広範囲にわたって摂取していた。また、ドイツで行われた調査で、遺伝子組み換え大豆に散布されている除草剤のグリホサートが、マヤの養蜂業者たちも育てるセイヨウミツバチの飛翔行動に悪影響を及ぼしていることがわかったのだ。
裁判は養蜂家たちの勝利に終わった。当時、メキシコで遺伝子組み換え大豆の種豆の販売を許可されていたのは、モンサント(その後バイエルに吸収合併)だけだった。国家最高法廷裁判所は15年にカンペチェを含む3州で遺伝子組み換え大豆の販売を禁じ、食品の安全を管轄する食品衛生安全品質管理局は17年にメキシコ全土での販売許可を取り消した。同局によると、カンペチェ州で最近行った大豆の種豆のサンプリング調査では、遺伝子組み換え物質の痕跡はわずかで、遺伝子組み換え大豆だけを栽培する農地は一つも確認できなかったという。
しかし、メノナイトの農業者たちは現在もカンペチェ州で遺伝子組み換え大豆を栽培していると認める。さらに、除草剤を空からも地上からも散布しているのだ。
「法的に言えば事態は改善されていますが、実際はそうではないのです」と話すのは、養蜂業者の訴訟を担当した先住民の権利を専門に扱う弁護士のナアイェリ・ラミレス=エスピノサだ。「あの地域では今でも、遺伝子組み換え大豆が栽培されているのを私たちは承知しています。当局には、こうした問題を解決する力はありません。種豆はどこにでもあるのです」