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大豆が壊す森とミツバチ メキシコ・ユカタン半島

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NIKKEI STYLE

ナショナルジオグラフィック日本版

メキシコの先住民マヤの人々が古代から育ててきたミツバチが次々と死んでいる。その原因の一つに、厳格な教義を守るキリスト教の1教派メノナイト(再洗礼派)と呼ばれる人々が栽培する大豆にあるようだ。ナショナル ジオグラフィック6月号では、伝統的な養蜂と大規模農業の間に生まれた摩擦をリポートしている。

◇     ◇     ◇

カンペチェ州では現在、およそ1万2000人のメノナイトが18カ所のコロニーで暮らしている。彼らは、キリスト教の1教派メノナイトのなかでも最も保守的な「オールド・コロニー・メノナイト」と呼ばれる人々だ。彼らは電気や電話、自動車といった文明の利器を使わずに暮らし(ただし、農業機械は使う)、ユカタン半島に入植して以来、広大な面積の森を伐採し、農地に変えてきた。

一方、蜂蜜は多くのマヤの家族にとって主要な収入源だ。毎年2万トンほどの蜂蜜がユカタン半島から主に米国や欧州連合(EU)に出荷されている。メキシコが遺伝子組み換え大豆を承認すると、EUは同国から輸入される蜂蜜に対して、遺伝子組み換え体の含有検査と表示を求め、場合によっては蜂蜜の輸入を拒否すると通達してきた。

養蜂家たちによれば、メノナイトが行っている大規模な農業、とりわけ遺伝子組み換え大豆の栽培と農薬散布がミツバチたちを殺し、蜂蜜を汚染しているという。「大豆栽培がこのまま拡大すれば、私たちのミツバチはいなくなるでしょう」と養蜂家は言う。「20年もしないうちに、ここにある何もかもが破壊されてしまいます」。不安は怒りへと変わっていった。

マヤの養蜂家たちは、土着のミツバチであるハリナシミツバチは霊界とつながりがあり、ミツバチと蜂蜜の神アー・ムツェン・カブからの贈り物だと信じてきた。ミツバチたちは葉が豊かに茂る森で力強く生きているが、ユカタン半島ではそうした森が急速になくなっているのだ。

ある養蜂家は、州内で遺伝子組み換え大豆が栽培され始めるとすぐに蜂蜜の生産量が激減し、死ぬミツバチが増えたという。1トンの蜂蜜を集めるのに、20年前なら12個の巣で足りたが、今では45個も必要だと教えてくれた。

 2012年、養蜂協同組合は同業者とともに、遺伝子組み換え大豆を許可した政府機関を起訴した。許可の決定に際して、先住民社会に意見を求めなかったのは違法だというのが理由だ。

養蜂家たちの主張では、育てているミツバチは餌を探して最長で7キロ移動するため、メノナイトが小型飛行機から散布する農薬にいや応なくさらされるという。12年、科学者たちはカンペチェ州から出荷された蜂蜜のサンプルを集めて分析し、研究結果を発表した。それによると、ミツバチは大豆の花粉を広範囲にわたって摂取していた。また、ドイツで行われた調査で、遺伝子組み換え大豆に散布されている除草剤のグリホサートが、マヤの養蜂業者たちも育てるセイヨウミツバチの飛翔行動に悪影響を及ぼしていることがわかったのだ。

裁判は養蜂家たちの勝利に終わった。当時、メキシコで遺伝子組み換え大豆の種豆の販売を許可されていたのは、モンサント(その後バイエルに吸収合併)だけだった。国家最高法廷裁判所は15年にカンペチェを含む3州で遺伝子組み換え大豆の販売を禁じ、食品の安全を管轄する食品衛生安全品質管理局は17年にメキシコ全土での販売許可を取り消した。同局によると、カンペチェ州で最近行った大豆の種豆のサンプリング調査では、遺伝子組み換え物質の痕跡はわずかで、遺伝子組み換え大豆だけを栽培する農地は一つも確認できなかったという。

しかし、メノナイトの農業者たちは現在もカンペチェ州で遺伝子組み換え大豆を栽培していると認める。さらに、除草剤を空からも地上からも散布しているのだ。

「法的に言えば事態は改善されていますが、実際はそうではないのです」と話すのは、養蜂業者の訴訟を担当した先住民の権利を専門に扱う弁護士のナアイェリ・ラミレス=エスピノサだ。「あの地域では今でも、遺伝子組み換え大豆が栽培されているのを私たちは承知しています。当局には、こうした問題を解決する力はありません。種豆はどこにでもあるのです」

それでも栽培は続いている

メキシコ政府が遺伝子組み換え大豆の禁止令をちゃんと施行すれば、メノナイトたちがそれに従うと信じる養蜂家は多い。ところが、メキシコ政府は禁止令を徹底させているとはいえないし、裁判所が命じた養蜂家との協議も実質的に進んでいない。

そもそも遺伝子組み換え大豆の種豆はどこから入り込んでいるのか? バイエルは関与を否定している一方で、遺伝子組み換え大豆が再び許可されるように努力すると表明している。バイエルの弁護士であるロドリゴ・オヘダ氏は、「遺伝子組み換え大豆と蜂蜜生産が共存できる道はあると信じています」と話した。

しかし、カンペチェ州のメノナイトとマヤの関係はもっと複雑だ。マヤの人々はメノナイトがつくり上げた農業主体の経済に組み込まれていて、多くのマヤの家族が養蜂だけでなく、自分たちを脅かす農業から得る収入に頼っているのだ。共有地をメノナイトに譲渡したスマベンの地主たち200人は、1人当たり100万円ほどを受け取ったと、この取引に家族が加わった養蜂家は明かす。メノナイトの農業に強く反対する人も含め、養蜂家たちは彼らの労働倫理やビジネスの才覚を称賛するのだ。

養蜂家のエディ・アリミ・サンチェスはこうした複雑な関係を体現している。彼は10年以上にわたってメノナイトに土地を貸して金を得てきた。そうしたことは、彼が暮らすコムチェンでは珍しいことではない。そして、遺伝子組み換えの大豆が栽培される畑の目と鼻の先で、サンチェスはミツバチを育ててきたのだ。

サンチェスはミツバチに異常が見つかっても、メノナイトを追い出さなかった。追い出したところで、自分で作物を栽培するための農機具も買えなければ、働き手も雇えなかったからだ。結局、サンチェスはミツバチをほとんど失ってしまった。そうなっても、遺伝子組み換え作物をやめさせる手だてがないことはわかっている。「何も打つ手はありません。最高裁だって何もできないんです」と彼は言う。

そう嘆きながらも、サンチェスはメノナイトを敵だとは考えていない。「彼らはいい人です」と彼は言う。「自然を壊すのだけが問題です」

(文 ニーナ・ストローリック、写真 ナディア・シーラ・コーエン、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年6月号の記事を再構成]

[参考]ここでダイジェストで紹介た記事「メキシコ ユカタン半島 蜂蜜と大豆」は、ナショナル ジオグラフィック日本版2021年6月号の特集の一つです。6月号では、世界自然遺産への登録を目指す「奄美大島、徳之島、沖縄島北部及び西表島」の豊かな生態系、美しきクリジナ洞窟、イタリア北東部の古い港湾都市トリエステなどを取り上げています。Twitter/Instagram @natgeomagjp

ナショナル ジオグラフィック日本版 2021年6月号[雑誌]

著者 : ナショナル ジオグラフィック
出版 : 日経ナショナルジオグラフィック社
価格 : 1,210 円(税込み)

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