ともさかりえ 20代前半から始めた料理レシピノート
12歳で芸能界デビューして以降、ドラマ、映画、舞台と数々の話題作に出演し、順風満帆に女優としてキャリアを重ねてきた、ともさかりえさん。一児の母でもある彼女が大切にしているものは、お気に入りの手料理をいつでも再現できるようにと、書きためている「レシピノート」だった。
好きな味をメモし続けたレシピノート
「このレシピノートは、料理を作り始めた20代前半から書き始めました。自分が『これは好きな味だな』と思った手料理のレシピを少しずつ書きためて、それと母から教わったものをメモしていたのが蓄積されていった感じです。
実家暮らしだったので、料理を作らなくてはいけない環境というわけではなかったのですが、レシピ本を読むのが昔から好きでした。そのうち、『これを作ってみたい』と思うようになり、同じ肉じゃがのレシピでも料理本によって作り方が違い、少しのアレンジで仕上がりが変わるのが面白くて、いつしか料理が趣味になりました。お菓子もよく作っていましたね。家族がおいしいと食べてくれるから、それがうれしくて、台所に立つ機会が増えていきました」
「特別なレシピと言えるものなんてありません。今では母として日々ご飯を作っていますけど、今年17歳になる息子は豚汁とかハンバーグが好きなので、凝ったものというよりは、ごくごく普通のご飯を作っています。シンプルな料理のほうが息子には好評なので」
料理が好きになると、調理グッズや食器などにもこだわりたくなるもの。ともさかさんの身の回りにあるお気に入りのアイテムとは?
「料理をし始めた頃に、5万~6万円くらいのフードプロセッサーを買いました。その年、コートを買うのを我慢して奮発しましたね(笑)。でも、今でも現役で活躍してくれているので、『あの時に買っといた私、ありがとう』という気持ちです。これだけ現役で長く活躍してくれているので、結果的にコスパも良かったと思います。
食器などもこれ以上置く場所がないので、買っちゃいけないと思いつつ、少しずつお気に入りのものを増やしています。やっぱりきれいな食器にご飯を盛り付けると気分が上がるので」
軽々しく足を踏み入れてはいけない「聖域」
「ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~」は古田新太と尾上右近がダブル主演を務め、脚本・演出を福原充則が担当する。今作でともさかさんは瀬田好恵役として、ミュージカルデビューを果たす。
「これまで一ファンとして客席で、ミュージカルを楽しんでいたので、できればそのままでいたかったのですが、今回、脚本・演出を務める福原さんと、いつか一緒に作品を作れたらいいなとひそかに思っていました。オファーをいただいた時は、もちろんうれしかったのですけど、ミュージカルということで、すぐにはお返事できませんでした。
というのも、自分の中でミュージカルはどこか特別なジャンルというか、軽々しく足を踏み入れてはいけない『聖域』という思いがあったからです。なので、結論を出す前に福原さんとお話したいなと、お時間を作っていただきました。『本当に私でいいんですか?』というのを確かめたくて、一方的に私の不安を伝えると、福原さんは特に多くは語らず、力強く『大丈夫です』とおっしゃってくれました。その時に、『じゃあ、ダメだったら全部福原さんのせいにしよう』と、思うことにしました(笑)。それと、もしここで自分が引き受けないで、劇場などでチラシを見た時に『やっぱり挑戦しておけばよかった』と後悔しそうだと思ったからですね」
出演するキャラクターは『善人不在』だという本作。水洗トイレが普及する前の昭和33年を舞台に物語が展開する。
「福原さんと古田さんが組むからには、普通のお話ではないんだろうなと漠然と思っていました。物語にはいろんなタイプの悪者が出てくるんですけど、私が演じる瀬田好恵は台本を読む限りでは、一見善人に見える。口調も穏やかで、すごく人当たりはいいけど、よく聞くとひどいことを言っているタチの悪いタイプの人です。
これから稽古に入りますが(※取材時)台本に目を通している段階から、出演するみなさんの顔を思い浮かべつつ、楽しんでいます。古田さんがこれを言ったら面白いんだろうなとか、ここの六角精児さんの悪い表情は目に浮かぶなど、勝手に想像しているので、それを稽古場で生で見られると思うとうれしいですね。台本を読んでいて、ワクワクしますし、福原さんの演出でどう具現化されるのか、今から楽しみです」
気に入ったものだけに囲まれて暮らしたい
12歳で芸能界デビューしたともさかさんは、20年10月に41歳の誕生日を迎えた。年齢を重ねるにつれ、モノに対する価値観は変化していったのだろうか?
「物欲はあるような、ないような……欲しいと思ったものをそのまま素直に買ったら負けだと思っている自分がいるんですよ。例えば、お友達と買い物に出かけて『気になっているのなら買いなよ』と言われても、『いや、これを買ったら私の負けだから』と買わずに帰ることがよくあるんです。でもそのモノが売り切れたことを知ると、途端にそれが欲しくなってネットで探し始めるということも……我ながら矛盾してますよね(笑)。
そういう意味では、物欲は尽きないですけど、ここ最近は、無駄なモノを減らして、気に入ったものだけに囲まれてシンプルに暮らしたいというマインドになってきました。それこそ、若い頃は外に出て、新しいものに出合うと欲しくなるようなこともありましたけど、今ではどうしたら快適な暮らしを送れるか、という思考に変わってきたと思います」
「40歳の記念に、気になっているピアスを買うことも頭によぎりましたけど、ついつい現実的なことばかりを考えてしまって、買いませんでした。でも、この先はそろそろ『自分へのご褒美』と自らを説得して、一目ぼれの勢いで何かを買ってもいいかなと思いますね。
『衛生』のご褒美ですか? いいかもしれないですね(笑)。久しぶりに欲しいと思ったビンテージのカバンがあって、でも『0の数が1つ多いわ』と見なかったことにして帰ってきました。けど、いまだに頭に浮かんだりするので、ご褒美をチラつかせながら、初めてのミュージカルを乗り切りたいと思います」
「ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~」
福原充則と古田新太の「汚いミュージカルをやろう」という構想から始まった本作。劇中では、水洗トイレが普及する前の昭和33年を舞台とした物語が展開する――。
脚本および演出・福原充則 音楽・水野良樹(いきものがかり)、益田トッシュ 出演・古田新太、尾上右近、咲妃みゆ、石田明(NON STYLE)、村上航、佐藤真弓、ともさかりえ、六角精児ほか 7~8月に東京、大阪、福岡で上演。
(文 中山洋平、写真 藤本和史)
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