軽々しく足を踏み入れてはいけない「聖域」

「ミュージカル『衛生』~リズム&バキューム~」は古田新太と尾上右近がダブル主演を務め、脚本・演出を福原充則が担当する。今作でともさかさんは瀬田好恵役として、ミュージカルデビューを果たす。

「これまで一ファンとして客席で、ミュージカルを楽しんでいたので、できればそのままでいたかったのですが、今回、脚本・演出を務める福原さんと、いつか一緒に作品を作れたらいいなとひそかに思っていました。オファーをいただいた時は、もちろんうれしかったのですけど、ミュージカルということで、すぐにはお返事できませんでした。

というのも、自分の中でミュージカルはどこか特別なジャンルというか、軽々しく足を踏み入れてはいけない『聖域』という思いがあったからです。なので、結論を出す前に福原さんとお話したいなと、お時間を作っていただきました。『本当に私でいいんですか?』というのを確かめたくて、一方的に私の不安を伝えると、福原さんは特に多くは語らず、力強く『大丈夫です』とおっしゃってくれました。その時に、『じゃあ、ダメだったら全部福原さんのせいにしよう』と、思うことにしました(笑)。それと、もしここで自分が引き受けないで、劇場などでチラシを見た時に『やっぱり挑戦しておけばよかった』と後悔しそうだと思ったからですね」

瀬田好恵役を演じる、ともさかさん

出演するキャラクターは『善人不在』だという本作。水洗トイレが普及する前の昭和33年を舞台に物語が展開する。

「福原さんと古田さんが組むからには、普通のお話ではないんだろうなと漠然と思っていました。物語にはいろんなタイプの悪者が出てくるんですけど、私が演じる瀬田好恵は台本を読む限りでは、一見善人に見える。口調も穏やかで、すごく人当たりはいいけど、よく聞くとひどいことを言っているタチの悪いタイプの人です。

これから稽古に入りますが(※取材時)台本に目を通している段階から、出演するみなさんの顔を思い浮かべつつ、楽しんでいます。古田さんがこれを言ったら面白いんだろうなとか、ここの六角精児さんの悪い表情は目に浮かぶなど、勝手に想像しているので、それを稽古場で生で見られると思うとうれしいですね。台本を読んでいて、ワクワクしますし、福原さんの演出でどう具現化されるのか、今から楽しみです」

「福原さんが脚本・演出を手掛けた『俺節』(2017年)を見て、福原さんのファンになりました。あんなに劇場で大号泣するなんて思わなかったですね(笑)。本当に感動しました」
「今後もミュージカルに出演ですか? そんな生意気なことは言えないです(笑)。多分、最初で最後の挑戦になるんじゃないかな。そういう意味ではかなり貴重な作品になると思います」
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