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どんな「がん」でもリハビリ大事 体の機能低下を防ぐ

がんになっても働き続けたい~辻哲也さん(上)

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NIKKEI STYLE

日経Gooday(グッデイ)

働く世代のがん患者が仕事を続けるには、体力の回復・維持、身体機能の改善は大切な要素になる。近年、がんによる身体機能の低下や、手術など治療の過程で起こる障害に対するリハビリテーションが広がってきている。

自身もがんになったライター、福島恵美が、がんになっても希望を持って働き続けるためのヒントを探るシリーズ。日本のがんのリハビリテーションをけん引してきた、慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室の辻 哲也教授に、がんリハビリの役割や実施状況を伺った。

どの病期でもどんながん種でも、リハビリは大事

――私は2013年に悪性リンパ腫になり、手術、抗がん剤治療、放射線治療を受けたのですが、当時はがん患者がリハビリテーションをすることをまったく知りませんでした。近年、同じ病気をした人から「入院中にリハビリをした」と聞き驚いたのですが、がん患者がリハビリをすることにピンと来る人は、まだ少ないと思います。まず、がんのリハビリの役割をお聞かせいただけますか。

がんの治療というと、今までは手術、化学療法、放射線治療というがん自体に対する治療が主体でした。しかし、ここ10年ほどで、治療する中で起こる患者さんの身体的・心理的な問題にもしっかり対応し、トータルでがんの治療をしていくことが重要だという認識が高まっています。その一番のきっかけになったのが、2006年に成立したがん対策基本法です。そこには「がん患者の療養生活の質の維持向上」が明記され、がんの診療には生活の質(QOL:Quality of Life)をしっかりとサポートすることが求められたのです。つまり、痛みや精神・心理的な問題、身体機能の低下や障害が出る問題、進行したがんの患者さんに見られるがん悪液質(下記コラム参照)の病態になるなど、患者さんを取り巻くいろいろな問題をサポートする必要があり、その一環としてリハビリが行われています。

がん悪液質とは
がんの進行とともに、食欲不振や体重減少が多くの患者で起こる。がん悪液質は、こういった栄養不良により衰弱した状態を指す。骨格筋量の持続的な減少が特徴で、食欲がなくなり、体重が減り、筋肉の量が減って歩けなくなる。これにより、がん患者の活動や生活の質(QOL)が大きく低下することになる。
※インタビュー後半で、辻先生による解説もあります

――がんのリハビリを受けるのは、どのような時期ですか。

結論からいうと、すべての時期にリハビリは重要で、病期別の目的が分類されています(下表)。がんと診断され治療が始まる前には、後遺症や合併症を予防するために行い、治療が始まってからは、いろいろな後遺症や手術などに伴う機能障害に対して回復を図ります。終末期には、患者さんの生活の質(QOL)を上げることを目指します。

どのようながんの種類でも、リハビリは必要だと考えています。入院中のがん患者さんであれば、がんの種類に関わらず、手術、化学療法、放射線治療、造血幹細胞移植の前後に、保険診療で「がん患者リハビリテーション料」として算定できます。終末期のがん患者さんで自宅復帰を目的にしている方もリハビリテーション料の算定が可能ですから、終末期のリハビリも重要性が認められていることになります。

がんのリハビリテーションの分類

課題は外来のがんリハビリが保険適用外であること

――すべてのがんで、入院中のリハビリが保険適用されるようになったのは近年のことですか。

2020年度診療報酬改定のときに、がんの種類によらずリハビリテーション料が算定できるようになりました。それまでは、どのようながんのどんな治療のときに算定できる、と複雑だったので大きな進歩です。ただ、外来でがん患者リハビリテーション料は算定できないので、課題になっています。

――入院中のがんのリハビリが保険適用されているのなら、外来のリハビリも保険適用してもらいたい、とがん経験者としては思います。

そうですね。がん患者リハビリテーション料が新設されたのは2010年です。その頃のがんの治療は入院がメインでしたから、外来で治療する発想があまりなかったのかもしれません。ただ、ここ10年くらいで、がんの治療は外来に相当移行しています。保険診療上は、通院して治療する方へのサポートが遅れていると思います。それに訪問リハビリやデイケア(日帰りの通所リハビリテーション)は、ほとんどが介護保険のサービスです。外来のリハビリは介護保険で行っていこうとする国の政策があるので、がん患者リハビリテーション料の外来での保険適用は、認めにくいのではないかと推測します。

――介護保険が使える年齢は65歳以上ですから、私のような50代のがん患者では利用できないですよね。

がん患者さんでも特定疾患であれば、40歳以上で介護保険は使えます[注1]。ただ、積極的に治療が行えなくなった終末期のがん患者さんなどが対象ですから、例えば悪性リンパ腫で普通に生活はできるけれど体力が弱って体がふらふらするくらいの患者さんだと、介護保険で訪問リハビリやデイケアを利用することはできないのです。

私が特に外来でリハビリができるといいなと思うのは、がんが体の中に残っている進行した病期の患者さんで、通院で化学療法などを行っている方です。完治はできず治療を続けなければいけませんし、骨にがんが転移すると骨折しやすくなったり、がん悪液質の状態が進むと筋肉が衰えたり、食欲がガクンと落ちたりするので、リスク管理をしながらリハビリを行うことが大事だからです。

[注1]厚生労働省「特定疾病の選定基準の考え方」を参照(https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/nintei/gaiyo3.html)

がん悪液質の患者にも大事な運動と栄養

――がん悪液質とは、どのような状態なのでしょうか。

がんが体にあると、炎症性サイトカインというホルモン類似物質が放出され、それが脳に作用すると食欲が抑制され、筋肉に作用すると筋肉が分解されてしまいます。食欲が落ちれば体重が減り、体重が減れば筋肉も落ちて体が痩せ、サルコペニア(筋肉量が減り、筋力が低下する状態)になってしまうのです。サルコペニアになると疲れてあまり歩かなくなり、動かないとさらに筋力、体力が落ちてしまいます。このような状態のときには、早めに運動や栄養管理をしていくことが大事です。それが治療を続けられ、生命予後を延ばすことにつながると思います。

がん悪液質の患者さんに対して今年4月に、アナモレリン塩酸塩錠(商品名:エドルミズ錠50mg)という新しい治療薬が出ました。適用基準は肺がんの一部や消化器系がんですが、食欲増進効果があるといわれるので、食べられるようになって運動すれば筋肉が付いてきます。薬の助けも借りながらちゃんと食べて運動することは、進行したがん患者さんでもとても大切になってきます。

多職種が連携してチームで行うがんリハビリ

――全国の医療機関でがんのリハビリは、どのくらい行われていますか。

がん患者リハビリテーション料の算定要件(規定の研修を修了したスタッフがリハビリに従事するなど)を満たす医療機関は、全国にあるがん診療連携拠点病院だと9割ほどあります。保険適用外ですが、外来でのリハビリが行われているのは約3割です。

――辻先生が診療されている慶應義塾大学病院では、がんのリハビリはどのように実施されているのですか。

当院ではリハビリ科に依頼があればまず、リハビリの専門医が診察し、リハビリのプログラムを立てて、薬と同じようにリハビリ処方を出します。実際のリハビリには、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士のリハビリ専門職が当たります。時々、リハビリの専門医が回復の状態や骨に転移がないかなどを確認したり、プログラムを見直したりします。患者さんが治療している診療科の主治医とは密に連携を図っています。

がんの種類や病期、受けている治療、がんの転移の状態でリハビリの内容は変わります。例えば、肺がんや食道がん・胃がんなど、胸部や腹部の手術を受けられる患者さんの場合には、手術前から、腹式呼吸や痰(たん)の出し方の練習、呼吸練習器などでの呼吸リハビリをしたり、全身の筋トレや有酸素運動で体力アップのための全身運動を行ったりするほうが、手術のあとの体の回復は早いです。手術の翌日には院内を歩いていただき、呼吸リハビリもしっかりと行います。退院後は無理をする必要はありませんが、運動を少ししていただいた方が体力はつき、仕事をしている方なら早く復職できるようになると思います。

◇   ◇   ◇

後編では、治療中・治療後のリハビリの効果を伺っていく。

(ライター 福島恵美)

辻哲也さん
慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室教授。慶應義塾大学病院腫瘍センターリハビリテーション部門部門長。日本リハビリテーション医学会専門医。日本リハビリテーション医学会指導責任者。日本臨床神経生理学会認定医。1990年慶應義塾大学医学部卒業後、同大学医学部研修医。1998年同大学助手。2000年ロンドン大学付属国立神経研究所リサーチフェロー。2002年静岡県立静岡がんセンターリハビリテーション科部長。2005年慶應義塾大学医学部リハビリテーション医学教室専任講師。2012年同准教授。主な著書に「ホスピス緩和ケア白書2021」(青海社)、「がんのリハビリテーションマニュアル」(医学書院)、「がんのリハビリテーションQ&A」(中外医学社)、「癌(がん)のリハビリテーション」(金原出版)などがある。

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