――スニーカー通勤するようになったのは、新型コロナの感染拡大でリモートワークが主流になったからですか。

「コロナ前の19年くらいから、世の中の仕事スタイルのカジュアル化が進んで、自分の中ではもう、シックカジュアルやスマートカジュアルへとスイッチしてもいいんじゃないか、スニーカーで出勤してもOKではないか、と思うようになったんです。IT企業は完全なカジュアルスタイルになっていますが、ラグジュアリーブランドはそこまではいっていません。でも、クールビズが提唱されたころから思っていましたが、日本は暑すぎるでしょ。スーツやジャケットを夏場に無理して着ることはないと思っていました」

「自由な服装からアイデアが生まれると信じています。猛暑にスーツを着て通勤するのは苦痛ですし、我慢を強いたら会社に行くのが楽しくなくなってしまう」

――社員にもそう提案されているのですね。

「はい。服装は自由にしています。私が大切にしたいのはスタッフに、会社に行くのが楽しいな、という気持ちになってもらうこと。暑いのにスーツでつらいなあ、なんていうことは一切避けたいんです。好きな格好でどうぞ、TシャツだってOKです。とはいえ、ブランド企業ですから、みなおしゃれへの意識は高い」

――社員の仕事スタイルの理想は。

「カジュアルなんだけど、ブランチでビストロに行けるような格好でしょうか。実際そうなっています。ビシッとスーツを着ているから仕事ができるわけではありません。能力の物差しは服装ではなく、私が重視しているのはアイデアです。ビジネスではアイデアが大事。それが会社を前に進める原動力になるのです」

服装の自由は発想の自由

――服装で我慢していると発想も自由になれないということですか。

「そう言えますね。好きな服を着て快適に楽しく仕事をすることが好循環を生みます。それにテレワークも増えてオンラインの会議も多いですから、シャツで仕事をしたければそれでいい。20代の若い人にとっては会社が自由だということはとても大切です」

「ただ、Tシャツで仕事をしていても、突然社外のお客さんと打ち合わせが決まることもありますよね。そのときはやはり会社の代表ですからTシャツというわけにはいかないでしょう。ですからスタッフには、会社にシャツやジャケットを用意しておいてね、と言っています。実際、会社にジャケットやビジネスシューズを置いている社員が増えていますし、着替え用の部屋も用意しています。私ももちろん着替え用のダークスーツ、ビジネスシューズ、ネクタイを置いています」

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