自ら書店へ営業も

新鮮な喜びだったのが、キャストの衣装合わせ。脚本を読んでイメージした俳優が実際に目の前で「役」として形になっていく初めての瞬間。「わー、やっと会えた!」と興奮したという。そんな初監督を終え、またやりたいかと尋ねると「機会があれば」。

「本当は芝居だけやっていたいんです。芝居が好きだから。プロデューサーも、プロデューサーじゃなきゃできないことをやってくれる人がいないから、『自分がやらなきゃ』って、20代から勝手に使命感を持ってやってるだけなんです。働く現場の労働時間とか、作品がヒットしたら作ったみんなにちゃんと還元しようよ、とか。

芝居が好きで芝居だけやってたい人が、それを実践できるような環境を作らなくちゃいけない。その解決策には、監督ではなくプロデューサーなんですよね。自分で組を作って、当たり前の労働環境を備えた現場を増やしていくしかないので。

『ゾッキ』では撮影の1年ほど前からヴィレッジヴァンガードさんとコラボグッズを作る話し合いをしてました。撮影中も、正統派の書店さんにも協力いただきたいなって突発的に思いついて、ロケ現場に近い豊橋市に本社のある精文館書店さんに営業に行ったりして。『ゾッキ』はヒットさせなきゃいけないんです(笑)」

(ライター 武田篤典)

[日経エンタテインメント! 2021年5月号の記事を再構成]

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