大正3年(1914年)の「たばこ代用」広告(森永製菓提供)

たばこの代用だったキャラメル

実は現代と異なり、当時発売されたミルクキャラメルは高価で、子どもが気軽に食べるものというよりどちらかといえば「高級な大人用のお菓子」だったという。

「この時期、実際に購入する大人向けに、『たばこの代用』として訴求していたこともありました。劇場や映画館で鑑賞している時の口寂しさを紛らわすために、アメはガサガサ音がして不向きだけれどキャラメルならばスマートに食べられるからです」(郭さん)

スマートな大人のためのお菓子という一面もあったキャラメル。「たばこの代わりに」というワードは健康志向の高まる現代人にも刺さるのではないか。

さらに1914年には、携帯に便利で、紙箱を二重にして保存性にも工夫した、今に続く黄色い紙箱入りの「森永ミルクキャラメル」を発売するに至った。

1914年に発売された「森永ミルクキャラメル」。現行品のもとになった。(森永製菓提供)

「滋養豊富・風味絶佳」と書かれた「栄養とおいしさ」を訴求するこの「森永ミルクキャラメル」は、大々的な宣伝効果もあり、爆発的な売れ行きを示した。現在まで100年以上、5つの元号を超えるロングセラー商品となり、日本だけでなく韓国や台湾などでも愛されている。

一方、「森永ミルクキャラメル」の誕生から時を経た1921年、ミルクはミルクでも、一風変わったミルクのエキスを配合したユニークなキャラメルが、西日本で誕生した。

道頓堀のグリコサインでおなじみ、大阪市に本社を置く江崎グリコによる、その名も「グリコ」だ。江崎グリコ経営企画本部コーポレートコミュニケーション部の光永益佐枝さんによると、栄養菓子「グリコ」には、栄養豊富な海のミルク「カキ」のエキスが配合されているという。

発売当初の栄養菓子「グリコ」(江崎グリコ提供)

「カキ」といえば、肝臓の働きをサポートするタウリンが豊富に含まれていることで有名な、酒飲みな大人の強い味方ではないか! 子どものお菓子なのに、意外な組み合わせに筆者は驚きを隠せなかった。なお、「グリコ」に含まれているカキエキスは国産のもので、黄みがかった色のパウダー状をしており、カキ特有の風味があるのだという。

このユニークなキャラメルを生み出したのは、佐賀で医薬品の販売業を営んでいた創業者の江崎利一。きっかけは地元の漁師たちがカキの煮汁を捨てるのを目にしたことだったという。

「カキの煮汁が捨てられる場面を見た創業者は、過去に読んだ『カキにはエネルギー代謝に大切なグリコーゲンが多く含まれている』という記事を思い出したのです。国民の体位向上に貢献するため、子どもたちが喜んで食べてくれるものを作ろうと、キャラメルにカキエキスを加え、グリコーゲンにちなんで『グリコ』と名づけ『栄養菓子』として売り出したのです」(江崎グリコの光永さん)

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