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キャラメル独自進化の120年 高級菓子から万人向けへ

6月10日は「ミルクキャラメル」の日(写真はPIXTA)
6月10日は「ミルクキャラメル」の日(写真はPIXTA)

 ボンジュール! パリからお届けする「食の豆知識」。来る6月10日は「ミルクキャラメル」の日。大手菓子メーカー森永製菓が、日本記念日協会に登録し、2000年に制定された。子どものころ、一度は口にしたことがあるに違いない「キャラメル」。この甘く濃厚な一粒が誕生し、日本人の定番のお菓子にまで成長した背景を探ってみよう。まずは日本のキャラメル市場でシェア1位を誇る森永製菓菓子マーケティング部の今村優見さんと郭恵昭さんにお話を伺った。

 そもそも日本にキャラメルという言葉が伝わったのは、いつごろなのだろうか。諸説あるが、「万国お菓子物語」(吉田菊次郎著 晶文社)によれば、鉄砲やキリスト教が日本に伝来した16世紀に、新しい外来文化のひとつとして入ってきたようだ。

 その約400年後、日本に独自のキャラメルが誕生する。生みの親は、森永製菓の創業者、森永太一郎。森永氏は「日本にはまだない、バターやミルク、砂糖などを使用した栄養のあるおいしい西洋菓子を日本の人々に食べてもらいたい」という強い想いで11年間アメリカで修業し、文明開化の機運が高まる1899年に「森永西洋菓子製造所」を開業、日本初のキャラメルを発売した。今から120年以上前のことだ。

 ところが、発売当初から飛ぶように売れたわけではなかったようだ。

1899年、森永西洋菓子製造所の開店当時の引札(広告チラシ)。西洋キャンデーの部にキャラメルの表記が見られる(森永製菓提供)

 森永製菓の今村さんは、次のように語る。「売れ行きが苦戦した理由は主に2つありました。1つはバターやミルクに当時の日本人の嗜好が慣れていなかったことが挙げられます。発売当時のレシピは、創業者がアメリカから持ち帰ったレシピでバターやミルクを多量に用いており、日本の一般の人々には、乳臭さくて濃厚すぎたようです。もう1つは日本特有の湿度の高さ。特に梅雨はキャラメルの品質保持にとって大敵だったのです」。

 そこで森永製菓は、キャラメルに加える乳製品の量を調整したり、かんきつ系の風味を加えたりして日本人好みの嗜好に近づけるよう、試行錯誤した。また、煮詰める温度を工夫し、ワックスペーパーで包んで保存性をよくするなど、様々な改良を重ねた。

 時は流れ、明治時代後期から大正時代になると、日本人の間で乳製品の栄養価値が注目され、徐々にバターやミルクが一般にも愛好され始めた。日本人の味覚が次第に洋風に変わってきたことが転機となった。

 「この流れを受けて、あえて乳製品の配分量を増やし、従来のキャラメルに『ミルク』の冠詞をつけて『ミルクキャラメル』という名称で新発売したのが、1913年の6月10日でした。6月10日を『ミルクキャラメルの日』として記念日にした由来はここにあります」(森永製菓の郭さん)

当時の日本人の嗜好に合わせたバラ売り用の『ミルクキャラメル』(森永製菓提供)
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たばこの代用だったキャラメル
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