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『「心」が分かるとモノが売れる』著者の鹿毛康司氏

『「心」が分かるとモノが売れる』著者の鹿毛康司氏

マーケティングの世界では「インサイト」と呼ばれる、顧客の「心」を理解するスキルが一流マーケターには求められます。エステーの宣伝部長として数々のヒットCMを手掛けてきた、かげこうじ事務所(東京・新宿)の鹿毛康司氏が、実務を通して研究してきた「心」の理解を実践できる、思考トレーニングを記した一冊が『「心」が分かるとモノが売れる』(日経BP)です。同書で鹿毛氏は「一流のマーケターは、一流の消費者であれ」と説きます。一流の消費者になるための3ステップを同書から引用しながら、編集者が読みどころを紹介します。

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一流の消費者とは、どのような存在でしょうか。それは自分の「心」を理解し、客としての自分の消費行動の中から、無意識下の行動や発想を見つけ出すスキルを持つことです。

人の行動の95%は無意識に支配されているといわれます。必ずしも合理的な判断で、物事を決めているわけではありません。ここに「心」が関係しています。ですが、その心を顧客に尋ねても、無意識の行動のため言葉にできません。なぜ顧客は商品を購入したのか。それを知るには、まず一流の消費者としての自分の心に尋ね、それを手掛かりに顧客を動かす「心のツボ」を探る必要があります。そこで、一流の消費者になるための3ステップを本書から紹介しましょう。

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ステップ1 行動を見つめる「眼力」を鍛える

人の行動の背景には、何かしらの「感情」や「意識」があります。しかし、最初から感情や意識を理解しようと思うと、自分の心を見誤ります。人は、思い込む生き物です。トレーニングが不十分なうちに、感情や意識に目を向けようとすると間違った解釈にとらわれやすくなります。まずは、誰がどう考えても覆せない事実である行動を正確に振り返る力をつけることが最初の一歩です。なぜ、その行動を起こしたのかという理由は封印してください。感情も意識も捨て去って、事実だけを拾い集めます。では早速やってみましょう。

【初級編】

あなたが「24時間以内にとった行動」について、600~800字程度を目安に、できるだけ詳しく書き出してください。

(回答例)

打ち合わせが始まる直前、コンビニエンスストアに寄った。あまり時間がなかったにもかかわらず、迷うことなく自動ドアの前に立つ。ドアが開き、店内に入った。ペットボトルが並んでいるショーケースの前を右端から左端まで歩き、また右端まで戻る。緑茶かジャスミン茶を取り出そうとショーケースの扉に手をかけて、数秒止まる。開けかけた扉を元に戻す。新商品のアイスクリームが並んでいるのを横目で眺めながら、総菜コーナーに行き、おにぎりコーナーに移動する。

そこには40代ぐらいの女性が立ち止まっている。何か買うつもりがあるのかないのか、身動きせずにおにぎりを眺めている。邪魔だなと思いながら、「ちょっといいですか」と話しかけて場所を空けてもらうこともできず、その周囲をウロウロしている自分がいる。やっと女性が別のところに動いたので、ようやくおにぎりを選べた。「急いでいるんじゃなかったのか」と自分自身に腹立たしい気持ちになりながら、おにぎりを端から一つ一つ見ていく。一番好きな「ツナマヨネーズ」が売り切れておらず、4個ぐらい残っているのを見てうれしくなる。しかし、なぜかカゴに入れたのはその隣にあった「昆布」だった。2つ買おうか迷って、1つだけにする。

そのままレジに並び、会計をする。店員と「レジ袋はいりますか」「いりません」というやりとりをしながら、ふと「カフェラテもください」と伝える。プラスチックカップをもらい、急ぎ足でコーヒーベンダーマシンの前に立つ。時計を見て、焦り始める。プラスチックカップをセットし、ボタンを押しながら、レジ袋からおにぎりを取り出し、食べ始める。カフェラテを注ぐ間に食べきりたい。しかし、思ったよりもカフェラテは短時間で注ぎ終えてしまった。周囲に人がいないことを確かめ、残り3分の1のおにぎりを口の中に押し込む。そして、逃げるようにコンビニを出た。(約775字)

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