しかし「どんな条件で抜擢するのか」ということについては、常に様々な議論があったのです。たとえば2000年代初頭に2兆円以上の売り上げを誇った三洋電機では、新卒採用時からの幹部候補抜擢として「アドバンス21」という仕組みを、管理職の中の選抜として「トップ1000」という仕組みを導入しました。しかしそこでの判断基準は、資質や能力、経験などを複合的に判断したものだったのです。残念ながら三洋電機はその後の環境変化の中で姿を消してしまいましたが、もしかすると、異なる選抜基準を選ぶべきだったのかもしれません。
単に「若さ」だけを選抜基準にしても、その結果、企業を存続させない人を選んでしまっては意味がありません。
環境変化が激しい時代において重要なことは、自社が生み出す価値は何なのか、という点でぶれないことです。
それがまさにブランドです。
そしてブランドは、経営が少しでもうまくいかなくなると、すぐに見直したくなってしまうものでもあります。時代に合わなくなっている。これからの変化に合わせて変えなければいけない。変革の場面でそういう言葉が声高に叫ばれます。
しかし、そこまで企業を成長させ存続させてきたブランドに、価値はないのでしょうか。その中にしっかり根付いている本質を見極めること。そしてその本質を選び出し、明確な言葉で伝えてゆくこと。それこそがブランドの伝導であり、変革の時代のリーダーに求められる行動です。
目の前の売り上げからブランド価値の維持・再創造へ
若手の抜擢の最大のメリットは、目の前の業務に慣れ切ってしまっている組織の変革です。
こうすれば売り上げがあがる。こうすれば利益を確保できる。そんな日々の当たり前が積み重なり、ルーチン的に人の行動を定めてしまっています。
しかし前述のようなデジタル化を進める際には、これまでの売り方、利益の出し方では機能しません。
しかし過去の全否定をしてしまっては、誰も気持ちよく動けません。
大事なことは、過去の良い点を抽出し、変化にあわせて再定義することです。
そのような行動をとれる人材であれば、年齢を問わず活躍できる、抜擢すべき人材として重宝されるのです。
みなさんが年齢を問わず活躍することを目指されるのであれば、あらためて、自社のブランドをじっくりと、自分事として理解してみてはいかがでしょう。
