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ゲームで人気、女戦士スカアハの聖地 神話と島の歴史

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ナショナルジオグラフィック日本版

英国スカイ島南部のエイショート湖のほとり。12世紀の要塞ダンスキー城は、丘の斜面にしがみつくように立っていた。今では崩れかけたその城壁が、空を背景にかつての面影をぎこちなくたどるばかりだ。

スコットランドの伝説的な戦士スカアハが、なぜわざわざ世界から隔絶されたこの場所を選んで、武人たちに戦闘を教える学校を開くことにしたのか、その理由はあきらかだ。有望な学生たちは遠方からはるばるここへやってきて、戦いや魔術の訓練に勤しみ、おそらくはケルト世界で最も偉大な戦士から、秘密裏に教えを受けることができただろう。

しかし、最強の戦士であった女王スカアハの最期に何があったのかは謎に包まれている。スカアハの墓は知られている限り存在せず、そのせいで彼女はいっそう神秘的な存在となっている。中世以来、スカアハは、世界が彼女を最も必要とするときに戻ってくると言い伝えられてきた。

「スカイ島では、神話と歴史を切り離すのは容易ではありません」と語るのは、地元のツアーガイド、キアラン・ストーマンス氏だ。「スカアハと呼ばれる女性がいたのは確かでしょうが、伝説のどこまでが本当のことだったのかはわかりません」

スコットランドの北西沖に位置するヘブリディーズ海に、カラスの翼を広げたような形で浮かぶスカイ島は、荒々しい自然の宝庫だ。ここは戦士や魔女の物語にうってつけの舞台であり、荒涼とした山々、湿原、流れ落ちる滝、湖の多い海岸は、長年の間、この島が激しい天候に見舞われてきたことを物語っている。

事実、スコットランドで2番目に大きなこの島の天気は、ここの景色と同じくらいドラマチックで、神の気まぐれのように一瞬のうちに変化する。スカイ島が別名「霧の島」と呼ばれるようになったことには、相応の理由があるのだ。

「ケルトの国々には、豊かな口承文学の伝統があります」とストーマンス氏は言う。「たとえば妖精は、何世紀にもわたって、病気のような、人々が理解できない奇妙な物事を説明する手段として使われてきました。事実であろうとなかろうと、そうやって世の危険を覆い隠してきたのです」

どうやらスカイ島では、伝説と現実のどちらも同じくらい幻想的なものであるようだ。

半人半獣のいるコルイスク湖へ

ダンスキー城からエイショート湖の対岸を見やると、島の中ほどにそびえるクィリン山脈の黒々とした山が、しわくちゃになった魔女の帽子のように立ち並び、過ぎゆく雲の行く手をふさいでいる。見渡す限り人影はほとんどない。スコットランド、スカイ島のこのあたりで頻繁に出会うのは、背の高い金色の草をゆらす風くらいのものだ。

 エルゴール村へ向かう道を外れたところにあるジュエリー工房「ダンカンハウス」では、ガース・ダンカン氏が、華やかな自作のケルト・ジュエリーを見せてくれる。ブローチ、紋章、指輪といった品々には、曲がりくねった複雑な模様が施されている。

母国の米国で銀細工の技術を学んだダンカン氏は、20年前、古い血縁に引かれてスカイ島に移り住んだ。「父方の家系がスコットランドにつながりがあるのです。以前はまったく興味をもっていなかったのですが、あるときよく調べてみたところ、自分がこの古代の伝統を守りたいと思っていることに気がついて、こうした作品を作りはじめました」

「今ではほかの場所に住むことなど考えられません」とダンカン氏は言う。「このひっそりとした場所にいるのが好きなんです。エルゴールまで行かなくとも、村のうわさは全部伝わってきますから」

次は小さな港町エルゴールに向かい、船旅専門の代理店「ミスティ・アイル・ボート・トリップス」を訪ねて、さらに人里離れた場所にあるコルイスク湖を目指す。

エルゴールから海をわたった向こう側にあるこの湖へ行くには、船を使うのがいちばん早い。さもなければ、ここから16キロのルートを歩くしかなく、途中には「バッド・ステップ」と呼ばれる、岩の斜面をはうように進む場所もあるとなれば、この方法がいちばん手軽でもある。

船上で双眼鏡を手にした代理店オーナーのシーマス・マキノン氏が、アザラシやカツオドリを指さした。

「あそこを見てください! はやく!」。2頭のミンククジラを見つけたシーマス氏が叫ぶと、一瞬見えたその姿に、ほかの乗客たちが息をのむ。クジラを見られるかどうかは運次第だと、シーマス氏は言う。

幻想的な水の住人たちに出会えるかどうかも、同じく運次第だ。「コルイスク湖にはウリシュクがいると言われています」と、シーマス氏の息子サンディ氏が言う。「体の半分が人間、半分がヤギのウリシュクは、不運をもたらすと言われています。もしウリシュクに見つかっても、ここへは連れて帰らないでください。一切かかわりたくありませんから」

魅力あふれるコルイスク湖は、ドラマチックさと静謐(せいひつ)さをあわせ持っており、暗く静かな鏡のようなその湖面には、荒々しいクィリンの山々がデジタル画像のような鮮明さで映り込んでいる。あたりには大きな岩がペーパーウェイトのようにぽつりぽつりと転がり、ウミワシのかすかな鳴き声が山々にこだまする。

この荒々しい情景を、スコットランド人作家のサー・ウォルター・スコットは、1814年の詩「ロード・オブ・ジ・アイルズ(諸島の主)」の中でこう描写している。「人の目がこれまで、あの恐ろしい湖ほど峻厳(しゅんげん)とした光景に出会ったことはほとんどない」

一方、詩人のアルフレッド・テニスン卿はさほどの運には恵まれず、その30年後に湖を訪れたときには、「分厚いウールのような白い霧」以外はほとんど何も見ることができなかった。

今もゲール語が息づく島

スカイ島の景観に精通している人物といえば、広さ93平方キロの私有地アイリーン・ヤーメインで猟場の管理人を務めるスコット・マッケンジー氏だ。この土地の名は、1746年、カロデンの戦いの後に若僭王(じゃくせんおう)ことチャールズ・エドワード・ステュアートの逃亡を助けたフローラ・マクドナルドが身柄を拘束された場所として、広く知られるようになった(フローラは後にロンドン塔に送られている)。

鹿撃ち帽などのハイランドの服装に身を包んだマッケンジー氏は、敷地内に立つ小さなホテルの管理を手伝い、近くのスレート村に古代から残る森林の保護に努めている。ほぼ10年にわたってこの土地を管理してきたマッケンジー氏は言う。

「以前よりも多くの人がスカイ島を訪れるようになりましたが、たいていは1日か2日だけで帰ってしまいます。もっと長くここに滞在して、ゆっくりと見て回ってほしいと思っています。1週間は十分に見て回れるだけのものがありますから」

スカイ島は、スコットランドで今もゲール語が話されている数少ない場所のひとつであり、現在も6万人のネーティブスピーカーがいる。ゲール語が今後どういう運命をたどるのかはわからないが(1981年から2001年の間に、ゲール語話者は30%減少した)、この伝統的な言葉は、島の生活と風景に深く刻み込まれている。

「スカイ島ではゲール語をいたるところで目にします」と、アイリーン・ヤーメインの所有者であるレディ・ルシラ・ノーブル氏は言う。「道路標識はもちろん、山、島、小川の名前にもゲール語が使われています」

人々が自宅から外の世界への憧れを募らせている今、スコットランドの荒々しい島々は、ソーシャルディスタンスを保って自然に浸れる場所の象徴のような存在だ。ただし、とマッケンジー氏は言う。「スカイ島は、世間で思われているような不毛な荒野ではありません。ここは常に進化を続ける活気に満ちた場所なのです」

1億6500万年前の恐竜と巨人の名残

旅の最後に訪れたスカイ島最北端のトロッターニッシュ半島には、時の足跡がはっきりと記されている。骨に沿った裂け目のように大地を切り裂いているのは、クワランと呼ばれる、古代の大規模な地すべりの痕跡だ。ここは現在でも、英国で最も地質学的に活発な地域のひとつであり、火山岩である玄武岩の層の下では土地がゆっくりと崩れ続けている。一帯が徐々に沈下しているため、周辺の道路は毎年修理が必要になるほどだ。

古代の痕跡はトロッターニッシュのそこここに見られる。スタッフィンでは、1億6500万年前の恐竜の足跡を探しながら干潮の浜辺をのんびりと散策できる。メルト滝は、地の果てのような切り立った崖から海に向かって轟々(ごうごう)と流れ落ちている。

何よりも興味深いのはオールドマン・オブ・ストーだ。このそそり立つ岩は、死んだ巨人の名残とも言われている。丘の斜面をのぼり、ドクロのように白いマツの切り株を踏み越えて、岩に向かって歩いてゆく。あたりは静寂に包まれ、聞こえるのはただ、ハイカーたちの荒い息を奪ってゆく薄く冷たい風の音だけで、上空を飛び回るカラスさえ声を立てない。

この高みにいるとスカイ島は記憶のかなたとなり、まるで神話そのもののように遠く感じられる。頭上には、太陽の光に貫かれた雲が空を漂う。雲はしかし、現れたと思ったとたん、またたく間に風に乗って消えていった。まるで戦士の女王から逃げ去る敵のように。

(文 CONNOR MCGOVERN、訳 北村京子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック 2021年5月10日付の記事を再構成]

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