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川上和人 鳥類学者の知られざる冒険的日常

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日経エンタテインメント!

オガサワラカワラヒワ。本の表紙の真ん中下あたりに描かれている、黄緑色っぽい鳥の名前である。鳥類学者の川上和人は、最新エッセー集のなかで、この鳥の名前を連呼した。なぜか。今にも絶滅しそうだからである。

「オガサワラカワラヒワは、小笠原諸島にのみ生息する鳥です。昨年5月末、新たな固有種として報道発表されました。そして同時に、日本で恐らく最も絶滅に近い鳥です。僕が初めて小笠原に行った1995年にはすでに数が減っていると言われていましたが、その姿を見ることは容易にできました。しかしその後、みるみる数が減っていった。100年前に比べると個体数が1%くらい、これは過小評価で、です。とにかく、オガサワラカワラヒワのことを知ってほしい、というのが、この本を書くモチベーションでした」

しかし、「このままだと絶滅しちゃう……という暗い本は誰も読んでくれないので(笑)」、ベストセラーとなった前作『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』(17年)に続く第2弾の今回も、大いに笑える1冊に。絶海の孤島で崖にとりついたり、生まれたばかりの島に降り立ったりのアドベンチャーな調査活動と、頭の中で延々と繰り広げられる研究活動という名のめくるめく妄想が、のめり込むほどの面白さで好奇心を刺激する。学術的な話題の最中に映画やマンガ、アニメの話をさらっと入れてくるのも油断がならない。進化論の話に「たとえば、左腕がサイコガンとなった動物の集団がいるとしよう」とか、固有種の説明でのっけから「地球には地球人とクリプトン人という2種の人型固有種がいる」とか。

「ものを考えるときって、一本道で行く人もいれば、回り道する人もいて、僕は、同時に余計なことがいっぱい思い浮かぶタイプ。それをそのまま、文章にしています。僕たち研究者は、いわゆる専門書を『横書きの本』、一般書を『縦書きの本』と呼んでいて、最終的には縦書きの本を書きたい、という思いがあります。それは、研究で得られた知識を一般に普及するということ。生物の多様性や自然の価値について、僕らがどんなに大切か分かっていたって、社会に広く知ってもらわなければ、保全活動は始められない。だから、僕の文章を笑いながら読むうちに、鳥のこと、自然のことを知って、考えてもらえればと」

自然の中の「知」を求めて

鳥とは無縁だった子どもが、大学で鳥の研究を始めたのも、小笠原諸島の鳥を専門にしたのも「すべて偶然」と言う。著述業のほか、トークも流ちょうだが、「僕の先祖が、書いたりしゃべったりするのが得意だったんでしょう」と笑う。

「楽しくできる仕事に就けて、僕はラッキーでした。鳥の研究で飯が食っていけるなんて、最高ですよね。鳥類って、エンタテインメントだと思うんです。武道館をいっぱいにするのと同じくらいの気概で、僕たちは山を登って鳥を捕まえているんです。特集を組んでいただいてもいいですよ(笑)」

鳥のことを考えるのが楽しい。データを見て、これは何を意味しているのだろうと考え、そこから答えを探し出す。「彫刻家が石の中に潜む"美"に仕えるように、研究者は自然の中に潜む"知"に奉仕するのだ」と川上は書く。生物の絶滅は、この「知」の源泉が世界から完全に消滅することを意味する。知りたい。考えたい。それこそが人間の喜びなんだ、と。

最後に、聞いてみる。鳥の、どういうところが面白いのか?

「飛んでるところ! それがすごい! 映画『未来世紀ブラジル』でも、翼をつけて飛ぼうとしたじゃないですか。本当は誰だって飛びたいけど、できない。それを鳥は、平気な顔してやるんですから」

鳥を見る目が変わる傑作だ。

『鳥類学は、あなたのお役に立てますか?』
大噴火した西之島での上陸調査に参加を果たし、南硫黄島での調査船ではドローンを飛ばし、研究室で「絶滅ごっこ」に夢中になる――。『スペースコブラ』『スーパーマン』『スター・ウォーズ』をはじめ、全編に映画やアニメ、マンガの話題が多数、ランダムに登場するが、「僕の中で、『これは歴史に残ったな』という不朽の名作しか出していません。この分野では金字塔!というもの。ただ、その分野自体がマニアック、ということはありますが(笑)」(エッセー/新潮社/1595円)

(ライター 剣持亜弥)

[日経エンタテインメント! 2021年5月号の記事を再構成]

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