日本近代化の基礎 まちづくり活用も

レンガは主に粘土や泥を焼き固めた建築材料。幕末から明治期にかけて海外から取り入れる形で日本でも広がったレンガ建築技術は土木、交通、産業の発展を支えてきた。当時から残る構造物の多くが「近代化遺産」と呼ばれる。国宝・重要文化財や日本遺産になった場所、インターネットを通じて資料や動画を公開している例も目立つ。

製造技術が発達するにつれ、富岡製糸場や製鉄所のような大規模施設にも活用されていく。ランキング入りはしなかったが、日本資本主義の父とされる渋沢栄一らが設立した日本煉瓦(れんが)製造株式会社旧煉瓦製造施設(埼玉県深谷市)でつくったレンガは東京駅や法務省旧本館などに使われた。渋沢の出身地でもある深谷はレンガを生かしたまちづくりを進めている。

日本の近代化に貢献してきたレンガだが、課題だったのが耐震化。関東大震災を機に、より丈夫な鉄筋コンクリートに主役の座を譲ることになる。ただレンガの醸し出すどこか懐かしい雰囲気を好む人も今なお多い。

■ランキングの見方 数字は専門家の評価を点数化。(1)主な所在地(2)写真提供元・撮影者

■調査の方法 全国各係する産業遺産から、専門家の助言を基に、日本の近代化の歩みを学ぶためにも知っておきたい29カ所を候補として選定。「歴史的価値の高さ」「日本の技術発展への貢献度」「構造物としての美しさ」といった観点から専門家12人におすすめ順に挙げてもらい、結果を編集部で集計した。

■今週の専門家 ▽井門隆夫(高崎経済大学教授)▽市原猛志(熊本学園大学商学部講師)▽伊東孝(日本イコモス国内委員会「技術遺産小委員会」主査)▽黒沢永紀(都市探検家)▽小塩稲之(日本観光文化協会会長)▽竹内秀一(日本修学旅行協会理事長)▽津村泰範(長岡造形大学准教授)▽富本一幸(トラベルニュース編集長)▽二村悟(工学院大学総合研究所客員研究員)▽前畑洋平(産業遺産コーディネーター)▽山岡邦章(岸和田市教育委員会郷土文化課文化財担当長)▽山田祐子(ツーリズムワイズラボ代表)=敬称略、五十音順

(佐々木聖)

[NIKKEIプラス1 2021年5月22日付]