日経ナショナル ジオグラフィック社

プラスチックが川を流れる距離が長いほど、実際に海に流れ出す可能性は低くなる。フランスのセーヌ川では、1970年代のラベルが貼られた飲料水のプラスチックボトルが河岸で発見された例がある。

メイジャー氏は、フィリピン、インドネシア、ドミニカ共和国のような熱帯の島を流れる小さな川が大量のプラスチックごみを運んでいることに驚いた。同様に、マレーシアや中米の比較的短い河川も、大量のプラスチックごみを流出させている。

「ガンジス川や長江のような大河だけが流出源ではないのです」とメイジャー氏は言う。

プラスチックごみを運ぶ小規模河川の一つ、グアテマラのラスバカス川(PHOTOGRAPH COURTESY THE OCEAN CLEANUP)

プラスチックの海洋流出に気候がもたらす影響も明らかになった。熱帯地方の河川はプラスチックを絶え間なく海に流出させているが、温帯地方では、雨期にあたる8月などの1カ月間で、または鉄砲水のような1回の事象で、大半のプラスチックが流出している。

プラスチックごみを海に流出させている川の大部分は、アジアの河川だ。この認識は、17年の研究から変わってない。新しいリストの上位50の河川のうち、アジアの河川が44を占めている。論文の著者らによれば、これは人口密度が影響している。

「アジアと東南アジアはホットスポットですが、これは改善することができます」と、共同著者のロラン・ルブルトン氏は話す。「今後数十年間にアフリカがどうなるか、それが少し心配です。アフリカは人口が増加し、若い世代が多く、経済も上向きなので、人々はもっと多くの商品を購入するようになるでしょう」

1000を超える河川からごみを排除できるのか

発表まで2年かけて査読が行われた今回の論文には、オランダの起業家、ボイヤン・スラット氏が出資する非営利組織「オーシャン・クリーンアップ」が資金を提供した。スラット氏は、太平洋のプラスチックごみの清掃活動に3000万ドル(約33億円)もの資金を投じた取り組みによって、世界にその名を知られており、ルブルトン氏とメイジャー氏も、このNPOで活動している。

スラット氏のチームは、その後、河川からごみを収集する「インターセプター」という名のごみ回収船を開発した。これは、米ボルティモアの清掃船「ミスター・トラッシュ・ホイール」の応用といってもいいだろう。ボルティモアでは、水車の力を利用したこの平底船が、08年から川のごみ回収に活躍しており、現在は4隻の清掃船が配備されている。

19年、スラット氏は、5年以内に1000隻のインターセプターを大量生産して展開する計画を発表した。この計画は新型コロナのパンデミック(世界的大流行)で遅れが生じているが、マレーシア、インドネシア、ベトナム、ドミニカ共和国で数隻がすでに稼働している。スラット氏によれば、課題はこの野心的な目標を達成できるように取り組みを拡大していくことだ。「1つの河川に配備するだけならば、それほど難しくはないのですが」とスラット氏。「10、100、1000の河川に展開するのは、かなりの難題です」

海洋保護団体「オーシャン・コンサーバンシー」の主任科学者で、今回の研究には関与していないジョージ・レナード氏は、清掃作業用の装置が進化しているとはいえ、1000の河川を清掃するという挑戦は、同団体が長く発してきたメッセージを体現するものだと話す。

「海洋プラスチックごみの除去よりも、まずプラスチックを海に流出させないようにする必要があると、私たちはずっと訴えてきました。それは、河川にごみを流出させないということでもあるのです」

(文 LAURA PARKER、訳 稲永浩子、日経ナショナル ジオグラフィック社)

[ナショナル ジオグラフィック ニュース 2021年5月16日付]