海のプラごみ、どこから? 筆頭は全長25kmの小河川

日経ナショナル ジオグラフィック社

ナショナルジオグラフィック日本版

インドネシアのシアク川に浮かぶプラスチックと発泡スチロールごみ(PHOTOGRAPH BY AFRIANTO SILALAHI, BARCROFT MEDIA/GETTY IMAGES)

プラスチックごみが海に流れ出るのを防ぐにはどうすればよいか? 一つは、川から流れ出るごみを減らすことだ。

河川は、プラスチックごみが海に流出する主要なルートになっている。2017年の研究では、海へ到達するプラスチックごみの90%が、ナイル川、アマゾン川、長江(揚子江)など世界有数の10の大河から流れ出ているとする成果が発表された。同じ年にもう1件、よく似た研究成果が報告され、大河の浄化が問題解決に大きな効果をもたらすという点で、研究者たちの見解は一致していた。

しかし、21年4月30日付で学術誌「Science Advances」に発表された新たな論文は、この見解を覆した。プラスチックごみの80%が、10や20ではなく1000以上の河川から流出していると報告したのだ。さらに、こうした廃棄物の大部分は、大規模河川というよりもむしろ、人口が密集した都市部を流れる小規模な河川によって運ばれていることもわかった。

これまでプラスチック汚染の筆頭とされてきたのは、中国を流れる全長6300キロの長江だったが、今回の研究結果により、1400万人が暮らすフィリピンの首都マニラを流れる全長26キロのパシッグ川に、その座を譲ることになった。

今回の論文は、プラスチックごみ問題について2つの重要な事実を示してくれる。一つは、プラスチックごみが地球のあらゆる隙間に拡散していること、もう一つは、プラスチックごみ問題を解決するにははるかに複雑でお金がかかるだろうということだ。さらに、この論文は「海洋と淡水系を保護する究極の解決策は、プラスチックごみを発生源である陸上で食い止めること」という海洋科学者やその他の専門家の長年の主張をあらためて裏づけている。

インドネシア、バリ島で45の河川の浄化に取り組んでいる「スンガイ・ウォッチ」の代表、ゲイリー・ベンチェギブ氏は、17年の論文には納得できなかったという。

「10の河川が取り上げられた論文には、とても驚きました。インドネシアで私たちが目の当たりにしている小規模河川の実態にそぐわない内容でした。ここは火山地帯の熱帯地方で、500メートルごとに川があり、どの川もプラスチックごみであふれています」

プラスチックが移動する様々な要素に着目

人類は、文明の夜明けからごみを川へ処分してきた。ここ10年でプラスチックごみ問題がクローズアップされるようになったが、研究されるのはたいてい海のプラごみについてで、河川やその他の淡水系に関する分析は大幅に遅れをとってきた。

今回の研究は、17年の研究にも参加した研究者らが、新たなモデルに基づいて実施した。新モデルでは、ごみが海までに流れる距離のほか、降水量や風向き、勾配など、プラスチックが川を移動するのに影響しそうな作用を考慮した。たとえば、プラスチックは、森林地帯よりも都市部から河川に流入しやすい。また、乾燥した気候よりも雨が多い気候において遠くまで移動する。さらに、埋め立て地やゴミ廃棄場が河川から約10キロ以内にある場合は、プラスチックごみが河川に流入する可能性が高いと想定した。

この新モデルによる計算では、海のプラスチックごみ全体の80%の排出に、1656の河川が関わっているとする結果が出た。

「数年前との大きな違いの一つは、河川を単なるプラスチックごみのベルトコンベヤーとは考えていない点です」。論文の筆頭著者、ローレンス・J・J・メイジャー氏はこう話す。「河口から数百キロも離れた場所で川にプラスチックを投げ入れても、それがそのまま海に流出するというわけではありません」

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1000を超える河川からごみを排除できるのか
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