公務員からIT企業に転職したが、意外と戸惑いはなかったという蒲原さん

「自治体からIT企業へ、と全くの異業種に転職することになりましたが、不思議と戸惑いはありませんでした。20代のうちは、多くの失敗体験を積み重ねることで30代以降が面白くなりそうだ、という直感があったので、むしろチャレンジしないことにリスクを感じていたのかもしれません。戸惑いはなかったのですが、当時は転職する同僚があまり多くなかったので、もし自分が通用しなかったら『公務員は使えない』というらく印を押されるのでは、という変な気負いはありました」

――サイボウズに入ってからの業務内容は。

「(プログラミング知識不要の)『ノーコード』の業務アプリ作成ソフト『kintone(キントーン)』の営業を担当しています。自治体の業務改善に貢献したいという思いが強く、自治体向けの営業職を希望していましたが、ITも営業も未経験だったので『まずは案件数の多い部署で力をつけたほうがいい』と民間企業向けの営業チームに配属されました。営業ノウハウについては先輩の商談に同席しながらOJT(職場内訓練)で学び、製品の詳細やクラウドサービスなどIT全般については主に独学で知識を習得し、1年ほどで念願だった公共市場(自治体・省庁)向け営業の仕事に移りました」

自治体の現場で業務課題を発見

「当時、自治体ではまだ『キントーン』の認知度が低く、どの程度の需要があるかもよく分かっていませんでした。そんななか、鎌倉市役所に約3ヶ月間『働き方改革フェロー』として派遣される機会があり、週1~2回常駐で働きました。自治体特有のネットワークではキントーンのようなクラウドサービスが使いづらいことが分かるなど、役所の何が課題で何をどう変えていくべきか、に対する理解が大幅に深まり、その後の自治体向け新規事業の着想にもつながりました」

「神戸市をはじめとするいくつかの自治体と一緒に先進的なモデルを作り、それを全国の自治体に広げるとともに、自治体職員同士をつなぐコミュニティーを作ってきました。各自治体の職員が作成したアプリを共有したり、ノウハウを公開したり、仲間を作りながらみんなで自治体の変革を進めています。副業でも、公務員が主にリモートで他の自治体の問題解決を支援する『公務員カタリスト事業』を立ち上げるべく動いています。昨今、若手を中心に自治体職員の離職が相次いでいますが、部署異動が多く自分のキャリアを主体的にデザインしづらい現状を少しでも改善できればという願いからです。ITだけでなく、人事や風土の面でもお役所をより良くしたいと思ったのがきっかけですが、結局、自分は自治体が好きだなと感じています」

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