40歳の自分が想像できず葛藤 区役所からサイボウズへ
未経験からDX人材へ(下)
区役所からサイボウズに転職した蒲原さん
「DX人材」はITエンジニアやプログラマーなど技術職だけではない。顧客のデジタル化推進を支援する営業職などもDX人材とされる。未経験からDX人材として転職した人に話を聞く連載の3回目は、区役所からサイボウズの営業職に転身した蒲原大輔さん(32)だ。
紙の多さに圧倒される日々
――新卒時、地方公務員のキャリアを選んだ理由は何ですか。
「ちょうど『国から地方へ』の動きが活発になっていた頃で、区役所職員の仕事に大きな可能性を感じました。ただ、実際に働いてみると、パソコンで作った文書を印刷し、印鑑をもらい郵送する、といったアナログな作業の連続で、紙の多さに圧倒される日々でした。最初の配属先の人事課では表計算ソフトなどを使って地道に業務改善に取り組みましたが、自分が異動した後に誰もメンテナンスできないという状況に直面しました」
「区役所全体を見渡すと数年ごとに人事異動があるうえ、異動先の希望が通らないことも多く、全体のモチベーションが下がっている印象を受けました。自分自身、どこに向かっているのか分からない、40歳の頃に何をしているか想像できない、という葛藤があったのを覚えています」
「一方、人事課の後に担当した産業振興の仕事では、同世代のITベンチャーの起業家たちが自分の実力で道を切り開いていく姿を目の当たりにしました。大きな刺激を受け、自分の市場価値を試してみたくなりました。もともとは転職を視野に入れていたわけではなく、どちらかというと、勤務時間以外で様々なことにトライできればいいと思っていました。中小企業診断士の試験を受けたり、社会人向け大学院に行ったりと自分なりのチャレンジを続けていましたが、やはり1日8時間を本業にあてるとそれ以外の時間にできることには限りがあります。一気に人生をガラッと変えるには本業を変える必要がある、という思いに至り、転職を決めました」
「公務員は使えない」と思われたくないと気負う
――転職先に選んだのはIT企業のサイボウズでした。
「転職していざ何をしようか、と考えていたころ、サイボウズが複数の行政機関と組み、ITで自治体の業務改革を進めていることを知りました。『サイボウズが始めた行政改革のうねりを他の自治体に広めていきたい、その一端を担いたい』と思ったのが第一の志望理由です。第二に、チームワークを重んじる企業文化にひかれた、ということがあります。サイボウズの青野慶久社長の著書で『チームワークあふれる社会を創る』という企業理念に徹底的にこだわっていることを知り、非常に共感しました。自治体の仕事は基本的に縦割りで、一人一人が担当の仕事を抱え込みがちですが、これをチームワークで進める形に変えていければいいなと考えていました」