「見ている」ことを伝える必要性

「応募してくれた子たちを通して、新しい才能を見られるのは単純に喜びでもあるんですが、同時に、『受け入れてくれる人がいる』『見てくれる人がいる』ことを本人に感じてもらうのが、すごく重要だなと感じることも多いんです。

韓国の練習生システムのいい部分は、登る山がはっきりしてるので目標もはっきりしてるし、評価してくれる人が常にいるので、成長しやすい環境だと思います。逆に悪い部分は、生殺与奪の権を握ってしまうので、評価する側がおごりやすいこと。そこは今後さらに自分も意識しないといけないと思うところです。

今の日本国内だと技術を磨けるスクールはすごくたくさんあるんですが、実際に自分を見てもらえる場所は少ないと認識しています。ちゃんとフラットにパフォーマンスを評価できる場って本当に限られていて。評価する側の人が経験しているエンタテインメント自体が20年前のものだったりとか、昔の成功例に引っ張られていたりとか。スクールはあれど、育成システムとしては危機的状況なのかもしれない。

応募してきたローティーンの子が『これが最後のオーディション』と言っていたのが印象的でした。最初は最後という意気込みで言っているのかなと思ったら、結局は自分が志向していない音楽を押し付けられたり、出たくないオーディションを強制させられそうになったりという育成システムそのものに絶望している。僕自身、これまでに違和感のある指摘や評価を与えられてきたことがあり、そうやって腑に落ちなかったものが、時間がたってから理解できたケースは一切ありませんでした。

だからこそ、自分に共鳴してくれたり、自分の曲を聴いて応募してくれる人たちがいる『THE FIRST』では、彼らの意志や実力を絶対に受け入れることを大切にしました。短所を修正するのは合宿以降でいい。とにかく合宿段階では長所を伸ばすことを大切にし、自分が活躍できる場所を探してここに来た子たちに、自分を見てくれる人がいることを強くアピールしたいと思いました。実際に今後デビューまでの歩みをともにできるかは別ですが、『評価を下す』のではなく、『好意的に見る』『好意的に向き合う』ことが、長期的に見て彼らの成長につながることになると考えています。技術面での課題を明確に伝え、ちゃんと見たという明らかなコメントを、3次審査に参加した30人には渡しています。

今回のオーディションは、もっとバラエティ的な見せ場を増やしたり、ソーシャルで盛り上がる要素を入れて話題作りをするアプローチもあるのかもしれません。もちろん番組が盛り上がるに越したことはありませんが、最終的な目標は、彼らの才能を消費してそういう番組を作ることではなく、才能を伸ばして、クオリティーの高いものを世の中に提示すること。そう考えると、優先すべきなのは、彼ら1人ひとりが成長し、クオリティーを上げるためにはどうしたらいいか、そのためには何を伝えればいいかだと思うんです。その哲学は見失ってはいけないことだと考えています」

「THE FIRST -BMSG Audition 2021-」
(提供:「THE FIRST-BMSG Audition 2021-」)
 第2回放送(4月9日公開)では、東京・札幌・名古屋・大阪の2次審査の模様を紹介した。ダンスの世界大会優勝者や、俳優やアイドルグループの経験者に混じって、未経験とは思えない才能を見せる者も現れた。審査の末、30人が3次審査に進んでいる(4月20日現在)。毎週金曜『スッキリ』(日本テレビ系)でダイジェスト版を放送、当日20時からHuluにてフル配信。

(ライター 横田直子)

[日経エンタテインメント! 2021年6月号の記事を再構成]

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