SKY-HI 「自分を見ている人がいる」が成長につながる連載 Be myself, for ourselves(1)

日経エンタテインメント!

日経エンタテインメント!

2021年中に新しいボーイズグループの誕生を目指し開催されているオーディション「THE FIRST -BMSG Audition 2021-」。このオーディションを主催する「BMSG」のCEOを務めるのが、AAAでも活躍するSKY-HI(日高光啓)だ。現在、オーディションは15人に絞られた合宿審査を公開中だ。

1986年12月12日生まれ、千葉県出身。ラッパー、トラックメイカー、プロデューサーなど、幅広く活動。2005年AAAのメンバーとしてデビュー。同時期からSKY-HIとしてソロ活動を開始。20年にBMSGを設立し、代表取締役CEOに就任。「THE FIRST」のテーマソング『To The First』が配信中(写真:上野裕二)

経営者であり、オーディションのオーガナイザーとしての役割のもと、才能のある若者を選び、育成し、世に出す──そこには、ビジネスマンにも共通する視点があるのではないか。そう考え、インタビューの連載をオファーした。1回目は、SKY-HIがどんな理由からいかなる才能を求めているのか。また、その先にあるものは何なのか。題して「才能の見極め方」。

「コロナ禍のため、2次審査は、東京以外、リモートで開催しました。ただ、リモートだとシンプルにダンスや歌唱、ラップの根本的なクオリティーは分かるけど、それ以上の部分は見えにくかった。歌に関して言えば、ピッチやリズムが外れていないか、ダンスでは振りをきちんと覚えて上手に踊れるかという力を見たのが2次だとすれば、3次審査以降は『自分が音楽を鳴らす』ことへの意識の有無が大きなポイントになってくるのかなと思います。

3次審査で残っているのは15人(5月22日現在)。選ぶ角度を変えたら全然違うメンバーが残る形になったかもしれません。答えは結果論でしかありませんが、そこに対して複雑な思いはありますね」

SKY‐HIは「THE FIRST」の審査の基準として、「クオリティファースト」「クリエイティブファースト」「アーティシズムファースト」の3つを掲げているが、そのうちの「アーティシズムファースト」が、次なる課題となる。「アーティシズムファースト」の審査で才能を見極める重要な要素の1つが、「本人と音楽との距離感の近さ」だ。

「僕はステージに立つ人間である以上、『その人が立つこと』に意味が出ないといけないと考えています。その人が歌うこと、ダンスすることに意味が出ないといけない。例えば、2時間程度のライブでステージに立つなら、決して長くないその2時間で、ちゃんと音楽を通してストーリーを紡ぐことができる人間かどうかを重視しています。

もちろん人前でパフォーマンスしたい、目立ちたいという夢も、モチベーションとして素敵なのですが、それがかなってしまうと、成長も止まるし、クオリティーの追求も難しくなる。根本のところで『音楽をやること』に強いモチベーションを持っていることはパフォーマンスする側にとってもすごく大事ですし、僕自身が新しいグループを作るのだから、そういう才能を集めないと意味がない。

「自分をうまく見せたい」のではなく、『楽曲をよく響かせたい』という意識が強い人を求めています。例えばダンスを踊るときに、取る音がたくさんあったり、パフォーマンスとして派手に見せたい場所で難しいムーブがあったとしても、それは『手段』であって『目的』ではないわけです。歌唱の場合でも、どんなメロディーを歌っても存在感を出せることと、何を歌ってもその人になってしまうことは、すごく似ているけれども真逆なことだったりする。発声の種類を増やしたり、声の響く場所を覚えることで、後者も改善できるかもしれませんが、その前段階の意識として『自分の歌を見せたい』が強ければ、改善にも対応できない。ダンスも歌も『自分をよく見せたい」が強いと、そこで成長は止まってしまうし、グループになった場合、浮いてしまうことが多いんです」