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コーヒーの実でお茶を入れてみたら… 3種類飲み比べ

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コーヒー豆は正確には「豆」ではなく、コーヒーノキになる果実の「種子」だ。コーヒーチェリーと呼ばれる赤く熟した果実から、精製処理によって皮と果肉を除去し、コーヒー豆を取り出す。ここで取り除いた果肉はたいてい捨てられてしまうが、それを乾燥させて煮出すとお茶のように飲める。一部地域で古くから親しまれているものもあれば、近年商品化されたものもある。そこで今、日本で飲める3つの「コーヒーのお茶」を実際に飲み比べてみた。素朴な酸味や甘味など、それぞれに独特の味わい。ホットでもアイスでも楽しめそうだ。

今回の飲み比べは、当コラム初回に登場した日本ネルドリップ珈琲普及協会の代表理事、繁田武之さんの協力を得た。運営する自家焙煎店、カフェ・ド・カルモ(東京都昭島市)が販売しているイエメン産「ギシルコーヒー」とボリビア産「カスカラ」、エチオピア産「コーヒーティー」の3種類をそろえた。

どれもあらかじめ不織布のパックに詰められており、そのまま抽出して飲めるようになっている。

まずはギシルコーヒー。モカ・マタリの産地として知られるイエメンでは、我々が使うコーヒー豆で作った飲み物を「ブン」と呼び、乾燥した果肉を香辛料と一緒に煮出したものを「ギシル」と呼ぶ。繁田さんによれば、現地では農家が収穫したコーヒーの実を天日乾燥し、これを仲買人が石臼で脱穀してコーヒー豆を取り出し、果肉部分を市場で売る。ギシルはイエメンでは古くから庶民に親しまれてきたポピュラーな飲み物だ。そもそもイエメンではコーヒー豆は貴重な輸出品なので、ブンは一般的にあまり飲まれてこなかったという。

今回飲むのはギシル20グラムにシナモン、カルダモン、ジンジャー、クローブを加えた1パック。400ccの水とともに鍋に入れて火にかけ、沸騰したら3分煮出し、砂糖を加える。この1パックで2、3回は抽出できる。カフェ・ド・カルモでは2パック入りを540円で販売している。

液体の見た目はコーヒーに似ている。甘い香りが立ち上り、口に含むとエキゾチックな風味が広がる。香辛料のせいか、カルメ焼きのような懐かしい香ばしさ。そして舌の奥に残る甘酸っぱさ。少し濃いめに抽出し、砂糖の甘さをまとわせたほうが、くっきりと個性が際立つ。アイスにすると、独特の香りがまろやかになり、また別の飲み物のようになる。

紅茶と同じように熱湯で抽出する

数百年にわたり飲み継がれてきたギシルに対し、カスカラの歴史は浅い。カスカラは「殻」を意味するスペイン語。ギシルは乾燥させた実から果肉をはぎ取るが、カスカラは収穫した実からまず果肉をはぎ取り、その後に乾燥させる。中米の一部地域で飲まれていたものが、サードウエーブコーヒーのブームと足並みをそろえるように、米国向けを中心に商品化が進んだといわれる。ただし「中南米でも一般市民にはまだ普及していないのでは」と繁田さんは指摘する。

飲み方は紅茶と同じで、ティーバッグ式に熱湯で抽出する。カフェ・ド・カルモで扱うボリビア産カスカラは5グラムのティーバッグ5個で648円。乾燥した果肉の色は、飲み比べた3種類の中で最も黒みがかっている。ティーバッグ1個を180ccのお湯に4分ほど漬けて抽出する。野趣あふれる、少し癖のあるねっとりした香りだが、味わいはローズヒップティーやハイビスカスティーに似た、爽やかな酸味に富む。ポリフェノールも豊富に含んでいる。

3つ目のエチオピア産コーヒーティーは、商品化が進むカスカラと対照的に、日本では極めて珍しい飲み物だ。繁田さんによれば、自身が運営するカフェ・ド・カルモと日本ネルドリップ珈琲普及協会の店(東京・杉並)でしか売っていないという。販売の経緯を聞けば、その事情がよくわかる。

福岡市の有名コーヒー専門店、珈琲美美の創業者である故森光宗男さんはコーヒーに対する探究心が旺盛で、「イエメンにギシルがあるなら、エチオピアにも似たようなものがあるはずだ」と考えた。実際、エチオピアの一部でもギシルが飲まれている。そこで専門商社に持ちかけ、数年前に現地から乾燥した果肉を輸入した。

ところがエチオピア産の果肉をギシルのように煮出してみても、うまい味に仕上がらない。思案にくれていたところ、懇意にしていた繁田さんがこれを引き取り、試行錯誤の末にティーバッグ方式で抽出することにした。

コーヒーの実の果肉 用途拡大に期待

エチオピアの産地では乾燥させたコーヒーの実を臼に入れて棒で突き、コーヒー豆を取り出す。破砕された果肉をお茶にして飲む習慣はほとんどなかった。「都内のエチオピア大使館やエチオピア料理店に聞いても、果肉の使い道は知らなかった。おそらく現地でもほんの一部の生産農家がお茶にして飲んでいるぐらいじゃないか」(繁田さん)。日本にあるコーヒーティーの在庫は、今のところ繁田さんの手元にあるものだけと思われる。価格は3パック入りで540円だ。

1パックは30グラム。これをお湯に漬けて抽出するほか、600ccの水に5~8時間漬ける水出しでも楽しめる。液体の色は3つの中で最も透明感がある。カスカラよりもさっぱりとした酸味で、甘いフルーツの香りが複雑に混じり合い、かすかに野性味も残る。どちらかといえば水出しのほうがえぐみも薄れ、味わいが優しく飲みやすい。

コーヒーチェリーのエキスを異国情緒あふれる風味とともにじっくり味わいたいのならギシル、甘酸っぱいハーブティーの感覚を楽しみたいのならカスカラかエチオピアのコーヒーティーがいいだろう。個人的には、夏場に冷やしてスイスイ飲むのは、コーヒーティーが最も向いていると感じた。

多くのコーヒー産地では、コーヒー豆を取り出した後の果肉はほとんどが廃棄されるか肥料に使われる。近年、この果肉を森林や農地の再生に活用する研究が進んでいるが、飲料としての需要が膨らめば、たとえ単価が安くとも、産地にいくばくかの収益をもたらす。もっとも、飲料の原材料としての商業化は、産地での農薬使用など適正な生産管理が前提となる。

今回、飲み比べに協力していただいた繁田さんは埼玉県の狭山にルーツを持つ日本茶の有名専門店の出身。1970年代半ば、海外を放浪していた21歳の繁田さんはブラジルに渡り、現地でコーヒー農園を開発・運営していた下坂匡さんのお世話になった。その縁もあって89年に下坂さんの農園のコーヒー豆を直接輸入し、「カルモシモサカ」の銘柄で日本で販売を始めた。

サードウエーブの時代を経て、今やコーヒー専門店が産地から豆を直接調達するダイレクトトレードは日本でも珍しくなくなったが、繁田さんはその先駆け的な存在だ。カルモシモサカの豆を通じて、森光さんをはじめとする著名なコーヒー専門店の創業者らと親交も結んだ。

その繁田さんも「コーヒーのお茶」の普及に期待を寄せる。狙い目は夏場のアイス需要かもしれない。エチオピアのコーヒーティーも、販売に手応えを感じるようであれば「新規の調達を考えてもいいかな」と話している。

(名出晃)

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