教師になる夢はずっと頭の中にあり、学部時代に教員免許を取得しました。大学院の2年間は、開成高校で物理の非常勤講師をする機会に恵まれました。たまたま大学の掲示板に募集が出ていたんです。開成は、中学受験のときはとても歯が立たないレベルでしたが、大学院で物理を専攻しているし、高校1年生を教えるのならできるかなと思って応募したところ、採用されました。

好奇心旺盛で優秀な開成の生徒に鍛えられた。

開成の生徒は皆、とても優秀ですから、「この先生はどのくらいできるのかな」と試してくるようなところがある。ある休み時間に生徒がタオルを手にやってきて、「先生、タオルの両端を持って垂らした時に曲線ができるけど、両手の間隔と曲線の間には相関関係があるんですか」と聞かれました。さすがに焦りましたね。慌ててググって、それが「カテナリー曲線」だというのを知り、調べたことを元に教えたら、納得してもらえたみたいでホッとしました。

物理の面白さだけではなく、世の中のことも伝えたいと思って、自分がヨーロッパやアジア、アメリカなどを一人旅した話で授業を盛り上げたりしていました。でも、社会やビジネスのこと、例えば広告業や不動産業、金融業は一体どういう仕事で、どんな役割があって、そこで働く人たちにはどういう楽しみや、やりがいがあるのかは、僕自身に経験がないので話せない。好奇心旺盛な彼らは知りたいと思っているのに。そこが申し訳なく、教師になる前に一旦、社会を知るため就職することにしました。そして働いているうちに、教師になるよりも、中高生の可能性を引き出す仕組みや、僕が理想と考える教育システムそのものをつくってみたいと考えるようになりました。開成では野球部のコーチも経験し、そこで感じたことも今のビジネスに大いに関係しています。後半で詳しくお話します。

(ライター 石臥薫子)

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