一方で、素晴らしい先生にも出会いました。今もその先生は浅野で教えていますが、当時は25歳くらい。非常勤で物理を担当していました。授業も面白く、その先生のおかげで僕は物理が好きになり、先生を質問攻めにしていました。印象に残っているのはある日、授業のコマが余ってしまったときのこと。通常なら他の教科の先生に譲るのですが、その先生は生徒に「サッカーやろうぜ」と声をかけてくれました。きっと先生だって上司から「若造が勝手なことをするな」と怒られるリスクもあったのに、ルールに縛られるのではなく、生徒のためを思って自分で判断して行動してくれた。そこに感動し、僕もこんな先生になりたいと憧れるようになりました。科目はもちろん物理です。

「浅野では素晴らしい先生にも出会えた。その先生のおかげで物理が好きになった」と振り返る

物理で一番好きなのは、複雑に見える世界を一つの数式で表せるところです。僕たちが立っていられるのは重力と垂直抗力が釣り合っているからとか、質量とエネルギーの関係はE=mc²という一つの式で表せるとか、そのシンプルさに引かれます。物理は僕の思考のベースです。それは本質を考えるということ。僕はソニー創業者の盛田昭夫さんを尊敬しているのですが、盛田さんも大阪帝国大学物理学科出身。本を読んでいても思考が似ていると感じます。

中高生の頃、定期試験の前には部活が一定期間禁止されましたが、甲子園を目指して頑張っている野球部員にとって試合前に練習できないのは死活問題です。それなのになぜ一律、禁止なのか。学校生活をすべて受験第一で考えるのが本当に生徒のためになるのか。そういうことにも納得できる本質的な解が欲しいと思っていました。

今は僕自身が、中高生を相手にプログラミングを教える事業をしていますが、彼らが納得し、自ら動きたくなるようなコミュニケーションをしようと心がけています。教育に関わる問題は複雑で多岐にわたりますが、常に根本にある本質的な問題は何かを考えます。その思考も、僕が物理を学んだことと関係していると思います。

浅野高校は近年、東京大学合格者数で躍進。文系では一橋大、理系では東京工業大学に進学する生徒も多い。だが自身は京都大学を受けた。

天邪鬼な性格なんです。周りがみんな東大・東工大を目指すなら僕は京大だと。京大の自由な雰囲気への憧れもありました。高校3年まで野球一色で、塾や予備校には一切通わず勉強しました。残念ながら京大は不合格で、慶応義塾大学理工学部の物理情報工学科に進みました。大学院時代は、医学部と連携して、CT画像から自動で肺気腫を診断できるシステム、今でいうディープラーニングに近い画像診断技術の研究に取り組んでいました。

ビジネス書などの書評を紹介
ブックコーナー ビジネス書などの書評はこちら